研究課題/領域番号 |
24350033
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 精一 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40281969)
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研究分担者 |
佐藤 雄介 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (90583039)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ノンコーディングRNA / 小分子 / 蛍光 / 検出 / 相互作用 / リガンド / TAR RNA |
研究概要 |
タンパク質に翻訳されずに機能するRNAは、ノンコーディングRNA(ncRNA)と呼ばれる。ここ10年程の間に、ncRNAが関与する生物現象の発見が相次ぎ、生物学の知見が新しいものに塗替えられつつある。 本研究では、ncRNA研究に寄与しうる新しい分析ツールの提供を目指して、「RNA非翻訳領域を特異的に認識しうる新規な低分子蛍光性リガンドを設計・合成、これらの化合物に基づくRNA解析法並びに薬剤スクリーニング法を開発する」ことを試みる。具体的には、リボスイッチやヒト免疫不全ウイルス(HIV)のTrans-activation responsive region(TAR RNA)、また、リボソームRNAのAサイトなどを研究対象とするもので、これらを標的とする高親和性・高選択的な蛍光検出リガンドを開発する。本年度は、特にTARRNAを標的とする蛍光性リガンドのスクリーニングを重点的に進めた。 TAR RNAは、メッセンジャーRNAの5'末端(HIVLTRの初期転写産物)に存在するヘアピン構造部分で、転写活性化タンパク質(Tat)がTAR RNAに結合してその転写を促進する。このため、HIV治療における創薬標的として注目されており、アミノグリコシド類やペプチド類を中心とした薬剤開発が進められている。一方、本研究では、Tatタンパク質とTARRNAとの結合において、アルギニン残基のグアニジル基がTARRNAのバルジ部位と水素結合を形成すること(Science, 1992, 257, 76-80)に着目し、グアニジル基を有する蛍光性化合物を中心にスクリーニングを行った。その結果、蛍光性のジアミノピラジン誘導体がアミノグリコシド類に匹敵する結合親和力で、かつTatタンパク質と同等の結合選択性をもってTAR RNAと結合しうることを見出した。現在、さらに結合モードの詳細について解析を進めるとともに、スクリーニング法への応用について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、現時点において、本研究で主要な標的とするTAR RNAに対する蛍光性リガンド(基本骨格)のスクリーニングに成功している。その構造識別機能はTatタンパクに匹敵するもので、今後、さらに結合機能と蛍光応答特性の改良を進めることで、スクリーニング試薬としての応用等が十分に期待できる。以上により、本研究は、おおむね順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
おおむね当初の研究計画に従って研究を進める。まず、H24年度に得た成果に基づいて、TAR RNA検出リガンドの改良を進める。ここでは、置換基や側鎖導入等による基本骨格の改変合成を行うとともに、疎水場環境応答型蛍光色素(ベンゾフラザン誘導体など)あるいは核酸結合性蛍光色素(シアニン誘導体など)を基本骨格に連結することで、蛍光性リガンドの結合力や選択性、また、蛍光応答特性の強化・改良を図る。これらの検討と平行して、リボソームRNAのAサイト等と相互作用しうる基本骨格を網羅的に探索、改良を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、検出リガンドの改良合成を進めるとともに、改良合成を施した蛍光性リガンドに関して、その基本性能(結合定数、選択性、蛍光特性など)を定量的かつ多角的に評価する。また、必要に応じてNMR分光法による構造解析等を併せて行うことを計画しており、これらを遂行するための消耗品費として使用する。次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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