研究課題/領域番号 |
24350034
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
山口 央 茨城大学, 理学部, 准教授 (10359531)
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研究分担者 |
伊藤 徹二 独立行政法人産業技術総合研究所, コンパクト化学システム研究センター, 主任研究員 (70392587)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メソ細孔 / 過冷却 / タンパク質 |
研究実績の概要 |
分子生物学の基本問題であるタンパク質の構造と機能を解明するための新しい実験系を開拓するのが本研究の目的である。過冷却水が安定的に存在する反応場の形成は、低温生化学的アプローチによるタンパク質研究の鍵といえる。本研究では、金属酸化物からなる均一メソ多孔体(細孔サイズ:数~数十 nm)内に発現する過冷却水を『低温反応分析場』と位置づけ、タンパク質の立体構造変化、反応中間体、活性を解明するための『低温生化学実験系』の構築を目標としている。平成26年度は,以下の項目について研究を遂行した。 【メソ細孔内過冷却環境の評価】バルク系におけるチオ尿素型アニオンレセプターと酢酸イオンの錯形成の温度依存性について精査したところ,エントロピー駆動型の吸熱反応であることが判明した。そこで,チオ尿素型アニオンレセプターのシリカメソ細孔内における熱力学情報の取得を行い,メソ細孔内過冷却環境の特異性について検証を進めている。 【メソ細孔内低温生化学実験系の構築】低温環境下におけるDNAの自己集合構造形成について検討を進めた。その結果,過冷却水を内包するシリカメソ細孔(細孔径:2.4 nm)において3塩基DNA断片の二重らせん構造形成制御が可能であること,不凍水(水/エタノール)を内包するアルミナ細孔(細孔径:200 nm)内において4塩基DNAの二重らせん構造形成制御が可能であることを実証し,また,それぞれの系において熱力学パラメーターの取得に成功した。このように,メソ細孔内低温生化学実験系がDNAの構造熱力学的研究に有効であることが分かった。一方で,DNA二次構造によってメソ細孔内における構造安定化機構が異なることが示されるなど,二次構造と空間サイズ・表面状態の相関についての興味深い結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【メソ細孔内過冷却環境の評価】について,バルク系においてチオ尿素型アニオンレセプターと酢酸イオンの錯形成が吸熱反応であるという予想に反した結果が得られ,その検証のために若干研究が遅れている。 【メソ細孔内低温生化学実験系の構築】については,DNA二次構造の制御と理解において有効性を実証することが出来た。一方で,実験で使用していたタンパク質が本研究において不適当であることが判明したために,タンパク質の選定などにとまどり,タンパク質系で実験系の構築は途上にある。
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今後の研究の推進方策 |
チオ尿素型アニオンレセプターを細孔内壁に修飾し,それとアミノ酸との錯形成の温度依存性を計測することで,熱力学的情報を取得する。併せて,単純なタンパク質二次構造(ヘリックス構造)を細孔内に取り込ませて,その低温変性を計測するためのメソ細孔内低温生化学実験系を構築する。以上の研究から,タンパク質系におけるメソ細孔内低温生化学実験系の有効性を実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
【メソ細孔内過冷却環境の評価】について,バルク系においてチオ尿素型アニオンレセプターと酢酸イオンの錯形成が吸熱反応であるという予想に反した結果が得られ,その検証のために時間を要したため,シリカメソ細孔内における錯形成の熱力学的研究が立ち後れている。また,チオ尿素型アニオンレセプターを修飾したシリカメソ細孔内にタンパク質を取り込み,そこでの構造熱力学的研究を予定しいるために,この課題の実施も遅れている。
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次年度使用額の使用計画 |
チオ尿素型アニオンレセプターを細孔内壁に修飾し,それとアミノ酸との錯形成の温度依存性を計測することで,熱力学的情報を取得する。併せて,単純なタンパク質二次構造(ヘリックス構造)を細孔内に取り込ませて,その低温変性を計測するためのメソ細孔内低温生化学実験系を構築する。そのために必要な試薬,タンパク質などの消耗品の購入に繰越予算を使用する。
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