本研究の目的は,均一シリカメソ多孔体であるメソポーラスシリカ細孔内での過冷却水(概ね-20℃~-60℃)を利用することで,バルク水溶液系では不可能である低温生化学実験系の構築にある。時間分解蛍光測定から細孔内過冷却水の微視的粘度は小さく,良好な分子拡散が可能な場であることを確認した。細孔内過冷却水中では,希薄水溶液中では熱力学的に不可能である短鎖DNA二本鎖形成が可能であることを見いだした。一方,細孔内過冷却水の凝固/融解挙動がタンパク質の細孔内吸着に依存することを見いだし,細孔内タンパク質の中性子散乱測定に成功した。以上,メソポーラスシリカを利用した低温生化学実験系の有効性を実証した。
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