研究課題/領域番号 |
24350035
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 記一 群馬大学, 理工学研究院, 准教授 (50321906)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロチップ / マイクロ流体デバイス / バイオアッセイ / マイクロ透析 / 生体模倣デバイス |
研究概要 |
バイオアッセイのための人体モデルの構築に最も重要な臓器・組織のチップ化を試みた。小腸から吸収された化学物質は、肝臓で代謝をされつつ、筋組織・脂肪組織に分布しながら流れていき、標的部位に作用し、そして腎臓において排泄されながら体内を循環する。研究代表者はこれまでに腸上皮、肝臓および腎臓のボウマン嚢における限外濾過機能に関するプロトタイプを構築してきたが、今年度は引き続きその最適化を行った。また、これまで未着手であった尿細管における腎再吸収については物質吸収をになう代表的なモデル細胞株を組み合わせた系を設計・試作し、その評価を行い、物質透過の障壁としての機能とモデル化合物の能動輸送脳の確認に成功した。一方、筋組織や脂肪組織についても同様にモデル細胞株の選定と培養を試みた。その結果、一部の細胞株においてマイクロチップ内に多層構造を有した三次元培養マイクロ組織を構築することに成功した。 また、上記薬物動態に関わるマイクロ臓器・組織の最適化研究に加え、創薬、食品中の機能性成分、化学物質の毒性などのリスク評価に頻用されるモデルアッセイ系を複数選定し、これらに用いられる代表的培養細胞株のマイクロチップ内での培養を試みた。具体的には各種抗がん剤の探索や血管内皮細胞への影響などを見ることにより、様々な病気、特に需要の大きい生活習慣病に関連するバイオアッセイ系に注目して系の選定を試みた。 さらに、標的組織の受けた生理活性の強弱を判定するのに必要な、評価のための検出系の開発を試みた。具体的には、細胞の生死や指標となる活性を蛍光染色や代謝産物の蛍光検出によって行う方法を確立した。また、超微量の試料から分離分析が可能なマイクロHPLCを用いて、モデル薬物の定量や代謝の有無などについて分析するためのシステム開発にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ循環器モデルの重要なパーツである、循環ポンプ、透析、腎再吸収、血管内皮のマイクロモデルの開発をほぼ実現できており、また、標的組織の選定や評価系の開発なども含め、本年度交付申請書に記載した研究実施計画の大半は実現されつつあり、おおむね計画通りにすすんでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はこれまでに開発してきた各種組織を組み合わせることにより、選定した疾病ごとに、より現実に近い疾病モデルを構築し、これまでに性状のよく知られたモデル薬剤等を用いてその性能を評価する。その際、マイクロ組織モデルには従来通りの株化細胞だけでなく、初代細胞も組み込むことを検討する。具体的にはヒト初代線維芽細胞及びヒト初代血管内皮細胞などを用いた3次元マイクロヒト組織を開発し、薬剤の分布や透過に関する試験を実現することをめざす。 平成27年度は開発したマイクロ器官・組織を可能な限り全て配置したマイクロ人体モデルを開発し、初代細胞の比率を高めることによりさらにその性能向上を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
バイオアッセイのための人体モデルの構築に最も重要な臓器・組織のチップ化を試みる研究において、本年度前半までは株化細胞を用いてきたが、より実際のヒトに近い応答を実現するために、ヒトの初代細胞をチップに組み込むことが必要であると判断した。そのため、株化細胞よりも高価な初代培養細胞を複数種類購入し、チップ内での培養法の確立とアッセイへの有効性を早めに検討する必要があり、そのための経費として学術研究助成基金助成金について前倒しを受けたが、購入予定であった細胞のうちのひとつについて、本年度中の購入が適当でないと判断し、購入を見送ったため、前倒しを受けた助成金の一部を繰り越したため。 繰越金については翌年度配分予定研究費と合わせ、上記、購入を先送りした細胞を含め、いくつかの初代細胞についてその性質などもとに選定した細胞の購入費、およびその培養に関わる培地などの消耗品、およびマイクロチップ作製材料などの消耗品費として主に使用し、それ以外に学会発表のための出張旅費として一部使用する。
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