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2013 年度 実績報告書

薬剤候補化合物の探索を強力に支援する幹細胞三次元共培養細胞チップの創製

研究課題

研究課題/領域番号 24350037
研究機関東京大学

研究代表者

吉本 敬太郎  東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60392172)

研究分担者 高橋 秀治  広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (90447318)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードバイオセンサー / 細胞チップ
研究概要

マイクロパタン培養法で構築された100 µm 径を有する均一な大きさのADSCスフェロイドの脂肪細胞への分化能の評価を行った。その結果、脂肪細胞関連遺伝子の発現量は単層培養よりも減少するものの、脂肪細胞への分化は単層培養と同程度で進行するもしくは不利であることが明らかとなった。これは、ADSCを不均一な大きさで三次元培養した先行研究で報告されている「脂肪細胞への分化へ明確な影響は与えない」という報告と似た結果となった。
間葉系幹細胞の二次元培養系において、密度が高くて細胞の大きさが小さい場合は脂肪細胞に、密度が低くて細胞の大きさが大きい場合に骨芽細胞に分化しやすいという報告があるが、一般的にスフェロイド培養された細胞1つの大きさは単層培養された細胞よりも小さくて細胞密度が高いことを考慮すると、スフェロイド培養されたADSCは脂肪細胞への分化が促進される可能性が高い。しかし、本研究で得られた結果から、スフェロイド培養系ではADSCの脂肪細胞分化を促進するような現象は観測されず、逆に本研究で得られた初年度の結果と合わせて考えると、骨芽細胞への分化が促進される環境であるといえる。
このように二次元培養系の先行研究結果との間に差異が生じるのは、細胞密度・細胞の大きさの他に強く脂肪細胞分化に影響を及ぼす要因があるためだと考えられる。例えば、三次元培養環境では発現している細胞間基質の種類や量が単層培養とは異なることが予想されるため、単層培養と三次元培養で発現している細胞間基質について調査を行うことで、スフェロイド培養系の分化メカニズムが解明される可能性がある。事実、骨芽細胞分化には細胞間基質のNカドヘリンとカドヘリン11が影響しているという報告がある 。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、マイクロパタン培養で提供される三次元培養環境がADSCの分化に与える影響を調査した。初年度得られた実験結果より、マイクロパタン培養系における ADSC の骨芽細胞への分化挙動に関して得られた知見として、①100 µm 系の円形マイクロパタン表面に播種後 24 時間以内に均一な大きさをもつ ADSC のスフェロイドが形成すること、②単層培養と比較して ADSC スフェロイドは骨芽細胞への分化時間が大幅に短縮できること、③ADSCの幹細胞性関連遺伝子の発現量が単層培養よりも向上することを見出した。しかし、本結果は、他の研究グループにより報告されている単層培養系で見出された結論と相反する部分がある。それは、ADSCの密度が高いときには脂肪細胞に分化しやすく、密度が低いときには骨芽細胞分化しやすいという単層培養系における報告である。細胞密度が高くなる本ADSCスフェロイド培養系において骨芽細胞への分化が単層培養時よりも促進されている点は非常に興味深い。そこで、Real Time PCR を用いる遺伝子発現量解析と Oil Red 染色を用いる脂肪細胞への分化評価を行うことでスフェロイド ADSC の脂肪細胞分化能を評価し、本三次元培養環境が中胚葉系細胞である骨芽細胞と脂肪細胞のどちらの分化に有利に働くのかを明らかとすることを目的とした。上述したように、本年度の目標である脂肪細胞と骨が細胞への分化誘導系の比較を行い、ある程度の知見が得られたが、一部未解明な部分も残った。

今後の研究の推進方策

本スフェロイド培養系は、ADSCに骨芽細胞分化を促進する環境を提供し、脂肪細胞分化には単層培養と同程度、または不利な環境を提供していることが示された。今後は、PPARγとRunx2、骨芽細胞分化と関連することが報告されている細胞間基質のカドヘリンやフィブロネクチンのウェスタンブロットによるタンパク量の比較、BMSCとの誘導因子応答の比較などを行うことで、本三次元培養環境で培養されたADSCの分化メカニズムが解明されるかもしれない。

次年度の研究費の使用計画

臨時に入った予想外の学内の予算や京都大学との共同研究の予算で、一部使用がオーバーラップする細胞培養関連の消耗品にかかる費用が削減できたため。
マイクロプレートアッセイを自動化し、実験系の効率化を目的とするためのディスペンサーを購入。さらに、マイクロパタン以外のスフェロイド作製を検討するため、パイボーラー電源を購入する。さらに、顕微鏡周辺の高額な消耗品・物品(ミラーセットや対物レンズ、インキュベータ)などの購入を予定。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (14件)

  • [雑誌論文] Polyion complex libraries possessing naturally occurring differentiation for pattern-based protein discrimination.2013

    • 著者名/発表者名
      Tomita, S., Yoshimoto, K.
    • 雑誌名

      Chemical Communication

      巻: 49 ページ: 10430-10432

    • DOI

      10.1039/C3CC45640D

    • 査読あり
  • [学会発表] 酵素/PEG化高分子電解質複合体ライブラリを利用するパターン認識に基づくタンパク質判別法2013

    • 著者名/発表者名
      冨田峻介、吉本敬太郎
    • 学会等名
      第23回日本MRS年次大会
    • 発表場所
      横浜市開港記念館、神奈川県横浜市
    • 年月日
      20131209-20131211
  • [学会発表] 酵素/高分子電解質複合体ライブラリアレイを用いるタンパク質の交差反応型蛍光センシング2013

    • 著者名/発表者名
      横山沙樹、冨田峻介、吉本敬太郎
    • 学会等名
      第23回日本MRS年次大会
    • 発表場所
      横浜市開港記念館、神奈川県横浜市
    • 年月日
      20131209-20131211
  • [学会発表] マイクロパタンスフェロイド培養法を用いる脂肪幹細胞の高機能化:未分化状態および骨芽細胞分化時における三次元培養環境の効果/Spheroid Culture Using Micro-patterned Surface Leads to Upregulation of Cellar Functions in Adipose Derived Stem Cell on Differentiated and Undifferentiated State2013

    • 著者名/発表者名
      菊池有夏、鈴木秀幸、佐藤守俊、高橋秀治、吉本敬太郎
    • 学会等名
      SCE2013 第33回キャピラリー電気泳動シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学、東京都文京区・日本女子大学、東京都文京区
    • 年月日
      20131113-20131115
  • [学会発表] PEG 修飾マイクロパタン表面における脂肪幹細胞の高機能化2013

    • 著者名/発表者名
      菊池有夏、高橋秀治、吉本敬太郎
    • 学会等名
      第62回高分子討論会
    • 発表場所
      金沢大学、石川県金沢市
    • 年月日
      20130911-20130913
  • [学会発表] 酵素/高分子電解質複合体ライブラリアレイを用いるタンパク質の交差反応型蛍光センシング法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      横山沙樹、冨田峻介、吉本敬太郎
    • 学会等名
      日本分析化学会第62年会
    • 発表場所
      近畿大学、大阪府東大阪市
    • 年月日
      20130910-20130912
  • [学会発表] Polyion complexes as a novel receptor library for a pattern recognition based protein discrimination2013

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Tomita, Keitaro Yoshimoto
    • 学会等名
      RSC-TIC2013
    • 発表場所
      幕張メッセ、千葉県千葉市
    • 年月日
      20130905-20130906
  • [学会発表] Upregulation of Differentiation Efficiency Using 3D Cell Culture Microenvironment Constructed by Adhesion-Controlled Micro-Patterned Surface2013

    • 著者名/発表者名
      Yuka Kikuchi, Keitaro Yoshimoto
    • 学会等名
      The 4th Asian Biomaterial Congress
    • 発表場所
      The Hong Kong University, Hong Kong, CHINA
    • 年月日
      20130626-20130629
  • [学会発表] Enzyme/PEGylated polyelectrolyte complexes: Novel receptor library based on naturally occurring differentiation for plasma protein identification2013

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Tomita, Keitaro Yoshimoto
    • 学会等名
      The 4th Asian Biomaterial Congress
    • 発表場所
      The Hong Kong University, Hong Kong, CHINA
    • 年月日
      20130626-20130629
  • [学会発表] パターン認識に基づく酵素/荷電性ブロックコポリマー複合体ライブラリ―を利用する血漿タンパク質判別法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      冨田峻介、吉本敬太郎
    • 学会等名
      第13回日本蛋白質科学会年会
    • 発表場所
      とりぎん分化会館, 鳥取県鳥取市
    • 年月日
      20130612-20130614
  • [学会発表] マイクロパタンを用いる脂肪幹細胞の三次元化:骨芽細胞スフェロイドチップの構築2013

    • 著者名/発表者名
      菊池有夏、吉本敬太郎
    • 学会等名
      日本分析化学会第73回分析化学討論会
    • 発表場所
      北海道大学、北海道函館市
    • 年月日
      20130518-20130519
  • [学会発表] 酵素/PEG化高分子電解質複合体ライブラリを用いるパターン認識に基づく血漿タンパク質センシング法の開発2013

    • 著者名/発表者名
      冨田峻介、吉本敬太郎
    • 学会等名
      日本分析化学会第73回分析化学討論会
    • 発表場所
      北海道大学、北海道函館市
    • 年月日
      20130518-20130519
  • [学会発表] 3-D construction of adipose derived stem cells cultured on a microfabricated surface : effects on stemness and differentiation

    • 著者名/発表者名
      菊池有夏、吉本敬太郎
    • 学会等名
      東京大学生命科学シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学伊藤国際学術研究センター、東京都文京区
  • [学会発表] Enzyme/PEGylated polyelectrolte complexes library for pattern-based protein discrimination

    • 著者名/発表者名
      Shunsuke Tomita, Keitaro Yoshimoto
    • 学会等名
      東京大学生命科学シンポジウム
    • 発表場所
      東京大学伊藤国際学術研究センター、東京都文京区
  • [学会発表] 非天然型三次元ニッチ形式に基づく脂肪幹細胞の機能制御に関する研究

    • 著者名/発表者名
      吉本敬太郎
    • 学会等名
      再生医学・再生医療の先端融合的共同研究拠点
    • 発表場所
      京都大学再生医科学研究所、京都府京都市

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公開日: 2015-05-28  

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