研究概要 |
対物レンズで集光した単一光束を用いる準弾性レーザー散乱法(QELS法)により、マイクロ加工した制限空間内の液体表面における界面張力波共鳴を計測し、微小空間での界面張力を得る手法について、検討を進めた。前年度までに、円形や四角形などの二次元制限空間からの共鳴信号を得ることに成功している。平成25年度は、円形制限空間に注目し、その共鳴モードをスペクトルから詳細に解析した。 直径44ミクロンの円形容器での二次元共鳴QELSスペクトルには、異なる共鳴に由来すると考えられる複数のピークが現れた。界面張力波の波長と速度の分散関係を用いて、シミュレーションにより共鳴モードの周波数を計算し、実験的に得た各ピークの周波数と比較した。円形の縁が同位相で振動する(1,0)、(2,0)、(3,0)モードの周波数63.8 kHz、 171.0 kHz、 341.5 kHzの計算値に対して、スペクトル中の49.6 kHz、172.4 kHz、338.4 kHzのピークが対応すると結論した。(2.0)、(3,0)モードが計算値と実験値がよく一致しているのに対して、(1,0)モードでは優位な差が観測されたが、理論上63.8 kHz以下の周波数にはピークは表れないため(1,0)モードに帰属した。この差は、比較的低い周波数では、壁面での非弾性反射などが影響するため現れたと考えられる。また、円形の縁上に節がある(2,1)モードの計算値が253.8 kHzであるのに対して、スペクトル上に247.0 kHzの信号が存在した。熱的に自然発生する共鳴モードには、縁上に節があるモードも存在することが示された。 本研究の目的の一つである「ナノスケール液体表面」の解析へ向け、マイクロスケールでの計測原理が明らかになった点で意義がある。
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