研究課題/領域番号 |
24350041
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 教授 (90155648)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 考古学 / 美術史 / 岩絵の具 / ポータブル粉末X線回折装置 / 非破壊分析 / 蛍光スペクトル / 紫外可視スペクトル / オンサイト分析 |
研究概要 |
絵画製作技術の解明に有効な手法として、本研究では世界最高性能の粉末X線回折計の製作を目標に開発研究を進めている。しかし、別記のとおり、回折計に用いたX線管球のトラブルから2013年度の完成は困難な見通しとなった。絵画などの文化財の分析に、X線回折法と並行して用いることが有効な分析手法として、蛍光X線分析、ラマン分光分析があるが、当グループでは、それらはルーチン分析が可能な状態にある。一方、文化財の色の研究に極めて有効であるが、今まで当グループに欠けていた手法として、蛍光スペクトルおよび透過・反射スペクトルの測定がある。たとえば、油絵の具、岩絵の具、有機顔料、染料の同定にこれらは大変有用な手法で、粉末X線回折法とも相補的に用いることができる。そこで本研究ではポータブルのそれらの光測定システムの開発を行うことを、本年度の新たな目標として設定した。 要素技術について種々の検討を行い、光源にはUV-LEDと重水素ハロゲンランプを蛍光法と吸収法で使い分け、検出器にはCCD検出器を用い、装置はグラスファイバーにより接続した。その結果、総重量8kg以下の軽量な測定システムを開発することができた。実試料への応用として、諏訪の北澤美術館で、エミールガレの多彩な色ガラスの分析に応用し、そこに用いられている顔料系の着色剤を明らかにすることができた。また、蛍光スペクトルの測定により、ウランガラスを同定することができた、一方、岩絵の具の分析を試み、反射スペクトル測定により、辰砂、ベンガラ、鉛丹、密陀僧、石黄、黄土、緑青、群青の同定が可能であることを実証でき、実用性の高いシステムが完成した。以上より、尾形光琳の紅白梅図屏風の岩絵の具の同定に、本分析装置が有効であること実証でき、X線回折計が2014年度に完成すれば、世界最高レベルの文化財オンサイト分析体制を構築できる見通しである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
開発したX線回折計に用いられているX線管球は、高出力タイプの小型X線管球であるが、装置として組み立てると、冷却がうまくいかず、改良にまる1年かかってしまった。現在のところね2014年5月に完成の見通しである。したがって、回折計の応用は、2014年度をまたねばならなかった。現有の第二世代の装置の利用も可能であるが、調査対象とした、ルクソールの壁画の分析に関しては、エジプトの争乱のため、2013年度は、我々が参加予定であった早稲田大学のエジプト調査隊の調査は実施されなかった。そこで、絵画の解析手法として当グループに欠けていた、ポータブル光スペクトル測定装置の開発を行った。
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今後の研究の推進方策 |
ポータブル回折計が2014年5月に完成する見通しであることから、完成したら直ちに性能評価と応用研究を進める。また、2013年度に開発した、ポータブル光分析装置の文化財分析への応用をさらに推進する。本年度は、早稲田大学エジプト調査隊がエジプト調査を再開する見通しであることから、開発した粉末X線回折計をエジプトにもっていき、活用することで当初の目標を達成したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定した消耗品が、年度内に納品できなかったため。 消耗品として使用する。
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