研究課題
近年、環境に配慮するなどの観点から提唱されている高効率な化学プロセスの開発は大きな注目を集めている。本研究室では炭素骨格の高効率構築法の開発を目指し、炭素―炭素結合切断反応と炭素―炭素結合生成反応を組みあわせることで、様々な新規の有機合成反応を見出している。ここではチタン錯体を用いた新しい炭素骨格の構築反応を報告する。チタノセンジクロリドに2当量のブチルリチウムを加え、2当量のアセンチレンを反応させると、チタンを含む5員環のシクロペンタジエンが生成する。チタナシクロペンタジエン錯体と求電子剤であるフェニルイソシアネートを反応させると、イソシアネートが付加したジヒドロインデン誘導体を得ることが分かった。本反応では、シクロペンタジエン(Cp)のような一般的に反応性の低い配位子を活性化し、チタナサイクルのジエン部位とのカップリングが進行することで四置換ジヒドロインデン錯体を生成している。同様に、チタナシクロペンタジエン錯体を50°Cで12時間加熱した後、フェニルイソシアネート試薬を加えた場合にも、イソシアネートが付加したジヒドロインデン誘導体を生成した。しかし、前述した反応で得られるジヒドロインデン誘導体にはジエン部位に4つの置換基が存在するが、本反応条件で得られるジヒドロインデン誘導体にはジエン部位に3つの置換基を有し、残りの1つの置換基は橋頭位に移動することを見出した。種々検討の結果、本反応系ではチタナシクロペンタジエンのCp環が一旦開裂し、組み変わることにより、前述の反応と異なる生成物を与えたと考えている。以上のように、チタン錯体による炭素―炭素結合生成及び切断反応を反応条件により制御し、二種類の異なるジヒドロインデニルチタン誘導体の効率的な合成法の開発に成功した。
2: おおむね順調に進展している
チタン錯体によるシクロペンタジエニル配位子とジエン部位とのカップリング反応および炭素-炭素結合切断反応を反応条件により制御し、二種類の異なるジヒドロインデニルチタン誘導体の効率的な合成法の開発に成功した。
来年度、反応機構解明と新規有機合成反応の開発する事が進行していると考えている。
日本化学会第94春季年会に9名参加予定していたが、学生や研究員が就職活動や学位論文の作成に追われ、4名の参加となり、約60万強の未使用額となった。平成25年度に生じた未使用額については、平成26年度に実施する計画のうち、実験消耗品(薬品、ガラス器具など)を購入する費用に充てる。
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