研究課題/領域番号 |
24350046
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
戸部 義人 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60127264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 二次元ポリマー / 固液界面 / 気液界面 / 自己集合 / 単分子膜 |
研究概要 |
本研究では、固液あるいは気液界面において形成される自己集合膜を利用し、連結部分に含まれる反応性部位の光反応により分子間の結合形成を行い、未知の新物質である多孔性の二次元ポリマーを合成することを目的に行った。 1.固液界面におけるデヒドロベンゾ[12]アヌレン(DBA)誘導体が形成する多孔性二次元ネットワークの利用 アルキル鎖の途中にブタジイン部位を含むDBAを合成し、それらがグラファイト/有機溶媒の界面においてハニカム型の自己集合単分子膜を形成することをSTM観測に基づいて観測した。鎖長の異なる複数の化合物を合成し、固液界面で形成された単分子膜への光照射を試みたが、いずれの場合も反応の生起を観測するには至らなかった。これはブタジイン末端のアルキル鎖が反応を抑制しているためであると考え、より高反応性の末端置換基をもつ前駆体の合成に着手した。一方、カルベン前駆体としてトリフオロメチルフェニルジアジリン部位を側鎖中に含むDBAの合成を達成し、この化合物がグラファイト/有機溶媒で多孔性の単分子膜を形成することをSTM観測に基づいて確認した。しかし、光照射による反応の生起が確認されなかったので、アジリジンの代わりにアジド基をもつDBAを次の目的分子に定め、その合成に着手した。そのほか、DBA誘導体の分子ネットワーク形成に及ぼす構造や温度の影響についても調査した。 2.気液界面において三方形分子が形成するLangmuir-Blodgett(LB)膜の利用 反応性部位をもちそれらが互いに近接するような細密充填構造をとるようにLB膜を形成する分子として、スチリル基を有し両親媒性置換基をもつ6置換ベンゼン誘導体を設計し、その合成を達成した。圧力-面積等温曲線の測定とBrewster角顕微鏡観測に基づき、この化合物が水と空気の界面においてLnagmuir膜を形成している可能性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
固液界面においてブタジイン部位を含む複数の長鎖アルキル置換デヒドロベンゾ[12]アヌレンを合成し、それらがハニカム型の多孔性単分子膜を形成することをSTM観測に基づき明らかにした。しかし、いずれの化合物も光照射による炭素ー炭素結合形成を観測するには至っていない。このためより反応性の高い分子を設計してその合成に着手している。この点は、計画よりやや遅れている。 一方、気液界面におけるLangmuir-Blodgett(LB)膜の利用に関しては、反応性部位をもちそれらが互いに近接するような細密充填構造をとるようにLB膜を形成する分子の合成を達成した。さらに、圧力-面積等温曲線の測定とBrewster角顕微鏡観測に基づき、この化合物が水と空気の界面においてLnagmuir膜を形成している可能性を明らかにした。したがって、当初の計画より以上に進展している。 したがって総合的にはおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
固液界面において形成される単分子膜を利用する共有結合形成の課題においては、末端に水素が置換したブタジイン分子やアジド基をもつ基質のように、これまで用いた分子よりも反応性が高い分子の合成を行っているので、引き続きこの方向で研究を遂行する。 気液界面におけるLangmuir-Blodgett(LB)膜の利用に関しては、Langmuir膜の形成の可能性が明らかになったので、固体基板への転写によるLB膜の形成とその光反応による二次元ポリマーの合成に取り組む。そのために、必要な十分な量の基質を再合成する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
固液界面における自己集合を利用した二次元ポリマーの合成に関する研究については、ビルディングブロックとなる化合物の設計をし直したため、26年度にその合成にかかる物品費が必要となることが予想させる。そのため少しでも多くの物品費を26年度に使用できるようにした。 上述の理由に基づき、固液界面における自己集合を利用した二次元ポリマーの合成に関する研究課題のビルディングブロック合成のための試薬等の物品費に使用する。
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