H27年度は,昨年度までに独自に開発した「シラシクロペンテンオキシドのエナンチオ選択的β-脱離反応を応用して,様々なキラルシラシクロペンタン類を不斉合成することに成功した.具体的には,辻反応を活用したマロン酸エステル基導入や,シクロプロパン化,エポキシ化など,いずれの反応も立体特異的に進行して,立体化学を損なうことなく単一の異性体で変換生成物を得ることに成功した.また,エポキシ化体と求核剤の反応が位置および立体選択的に進行して,様々なヘテロ官能基を有するシラシクロペンタン類を得た.さらに,昨年度,予備的な知見が得られていたシラシクロペンタントリオールの生理活性について詳細に検討した結果,セロトニン受容タンパク5-HT2Bに対して特異的な結合活性を示すことを明らかに知るとともに,その活性がケイ素上の立体化学や置換基によって劇的に変化することを見出した.これは,ケイ素上の立体化学が分子の生理活性に顕著な影響を与えることを明らかにした世界で初めての例である.本研究の高い新規性が評価されて,ドイツの学術誌であるAngewandte Chemie International Editionに投稿した論文が上位5%の重要論文:Very Important Paper (VIP)に選抜された.
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