研究課題/領域番号 |
24350050
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70252591)
|
研究分担者 |
河内 卓彌 慶應義塾大学, 理工学部, 講師 (70396779)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | ロジウム / キノリノラト / ビニリデン / 末端アルキン / PNO三座配位子 / 二核ロジウム錯体 |
研究実績の概要 |
これまでの2年間の検討において、(8-キノリノラト)ロジウム錯体を触媒に用いれば末端アルキンが効率的に活性化され、アセチレン炭素上へ炭素求核剤が攻撃して生じる四員環ならびに五員環化合物が得られる触媒反応の開発に成功している。本年度は、(8-キノリノラト)ロジウム錯体がもつ新たな触媒能力の探索、ならびにこれまで開発した触媒反応における中間体として推定しているビニリデンロジウム錯体の合成と反応機構に関する情報を得るための検討を行った。 (8-キノリノラト)ロジウム錯体を触媒に用いる一連の反応では、ホスフィンを添加することにより触媒活性が大きく向上することを見出している。そこで、8-キノリノールの2位にホスフィン部位を導入した化合物を配位子にもつロジウム錯体の合成を検討した。その結果、[(2-Ph2PCH2-8-Q)(cod)Rh]錯体(Q = キノリノラト)の二量体を合成することができた。この錯体は様々な配位子と反応し、[(2-Ph2PCH2-8-Q)(L)Rh]錯体(L = PPh3, P(4-MeOC6H4)3, P(4-CF3C6H4)3, C5H5N)へ効率的に変換することが可能であった。また、合成した錯体の構造は単結晶X線回折により確認した。cod配位子をもつ二量体を1-オクチンと反応させたところ、1-オクチン由来のビニリデン部位が2つのロジウム中心に橋架けした構造をもつ錯体が得られた。錯体の構造は各種NMRスペクトルならびに単結晶X線回折により決定した。これまでの研究で開発した反応の重要中間体としてビニリデンロジウム錯体を想定していたことから、得られたこの錯体は触媒反応の機構に重要な中間体の一つであると考えている。また、単離した架橋二核錯体は触媒活性を示すことも確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24-25年度は末端アルキンを用いた新規触媒反応の開発を検討し、狙い通りの反応が進行し、炭素ならび窒素が求核攻撃をした化合物を与える新規触媒反応の開発に成功した。これら結果は一部を除いて学術誌においての報告ならびに国内外の学会において発表することができた。平成26年度の研究では、一部研究計画通りに進行しない反応があったため、反応機構に関する情報を集める検討を行った。その結果、本研究における触媒反応において重要な中間体の一つである架橋ビニリデンロジウム二核の単離に成功した。この錯体がいくつかの反応に対して触媒活性を示すことを明らかにできたことは、本研究計画当初では予想していなかった進展である。このように、本研究はおおむね順調に進行しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画では予期していなかったビニリデンが関与した錯体の単離に成功した。延長した研究期間において、これら錯体がもつ反応性の解明ならびに触媒反応の機構解明を行う。これらのことにより、(8-キノリノラト)ロジウム錯体がもつ反応性の特長についての情報を収集する。 さらに、PNO三座配位子をもつロジウム錯体を用いて得られた知見をもとに、配位子を新たに設計し、それらを金属錯体としたのち、触媒活性を検討する計画である。また、これまでの知見をもとに他の金属に対して適用することにより、ロジウム錯体以上の反応性をもつ触媒系の構築を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初に計画した内容は平成26年7月頃までほぼ計画通り進んでいました。7月頃から取り組んだ研究課題が計画通りに進まなくなった。そこで、反応の検討を進めることを中断し、反応中間体に関する知見を収集することを始めた。このため反応検討に使用予定だった研究費が未使用となった。現在、当初の計画を遂行するのに必要な研究結果を見出している。このような経緯で研究期間を延長して研究を行うこととした。
|
次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入:【有機試薬】898965円、【遷移金属化合物】:600000円、【無機試薬】:450000円、【ガラス器具】:700000円、【重水素化溶媒】:400000円 旅費:【国外旅費】:400000円、【国内旅費】:70000円
|