研究概要 |
抗体医薬に代表される糖タンパク質は、21世紀のライフサイエンスの中核の一つとなる重要な高分子グライコマテリアルである。これまで、均一な糖鎖を有する糖タンパク質を合成する一般的な手法が存在しないために、糖タンパク質を基盤とする医薬品開発の大きな障害となっていた。本研究では、糖タンパク質を,保護基を用いることなく,水中において,有機反応と酵素反応をワンポット化して合成する画期的な方法論を提供する。具体的には,有機反応と酵素反応のワンポット化を指向した糖オキサゾリン中間体を基盤とする基礎研究ならびに生成糖タンパク質の評価を含め,抗体医薬の高効率的な生産プロセスを開発する。 平成24年度においては、前述した目的を達成するため、市販のSGオリゴ糖を原料とし,各種糖加水分解酵素を順次作用させた。これにより,還元末端にN-アセチルグルコサミンをもつ各種オリゴ糖の調製を行った。上記混合物を,液体クロマトグラフィーで精製した。さらに、各種水溶性脱水縮合剤をスクリーニングすることにより,オリゴ糖を直接活性化糖モノマーへ変換する反応の開発を行った。すなわち、2-アセタミド-2-デオキシ糖に水溶性2-クロロイミダゾリニウム塩を作用させると,対応する糖オキサゾリンが95%以上の高収率で生成すること見出した。これにより、従来方法では合成困難なN結合型オリゴ糖オキサゾリンへの変換が可能となった。また、ワンポット化を指向した糖オキサゾリンの簡易合成を試みた結果、脱水縮合剤の構造が,ワンポット合成に適したベンゾイミダゾリニウム塩型の縮合剤(CDMBI)を開発した。
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