研究課題/領域番号 |
24350052
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
正田 晋一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10143364)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖オキサゾリン / 糖加水分解酵素 / 変異型酵素 / ラクトN-ビオース / ラクトN-テトラオース |
研究実績の概要 |
前年度までに得られた成果を踏まえ、今年度においては、糖オキサゾリンと糖加水分解酵素を、組み合わせ用いることにより、効率的な配糖化反応を開発することができた。具体的には、まず水中において一段階で実行可能なオキサゾリン化試薬の改良を行った。これまでの試薬は、オキサゾリン化により生成する副生成物が水に可溶なため、反応系からの除去が困難であった。そこで、試薬構造の一部にベンゼン環を導入することにより、副生成物が反応系外へ沈殿として除去することに成功した。次に、変異型酵素の設計と発現、および配糖化収率を向上させるための温度、基質濃度、およびpH等の最適化を行った。すなわち、ラクトN-ビアーゼ酵素を変異型へと変換することにより、糖転移能のより高い触媒を調製した。また、糖供与体合成と糖転移反応とのワンポット化に適した溶媒等について詳細に検討を行った。その結果、ラクトN-ビオースを対応するオキサゾリン誘導体へと変換した後、それを単離生成することなく、オキサゾリン誘導体を糖供与体、ラクトースを糖受容体として用いる酵素的糖転移反応を開発することができた。生成物はヒトミルクオリゴ糖として近年多くの科学者の注目を集めているラクトN-テトラオースであり、本研究で開発した手法を用いることにより、これまで少量でしか得ることのできなかったラクトN-テトラオースを、出発原料の保護、脱保護、ならびに有機溶媒を使用することなく、効率的に合成するプロセスの開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中核をなす糖オキサゾリン供与体の合成において、水中、一段階で合成可能な画期的な手法を開発することができた。このことにより、これまで、糖供与体と配糖化反応を、それぞれ、有機溶媒と水溶媒を用いて行わなくてはならなかった状況を、出発原料から生成物までを水溶媒中のみで行えるようになった。以上のことから、当初の計画通り順調に進行していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の第一目標である糖タンパク質の合成へ向けて、国内の他の研究者と協力しながら、推進する。具体的には、抗体医薬の画期的な合成法の確立に向けて、N-結合型オリゴ糖のオキサゾリン誘導体の合成、ならびにそれを供与体とする抗体タンパク質への糖鎖の付加を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
オキサゾリンの合成研究に用いるジシアロ型オリゴ糖の購入を次年度に持ち越したため。
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次年度使用額の使用計画 |
ジシアロ型オリゴ糖の購入を予定している。
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