研究実績の概要 |
次世代S-ビニル型ポリマーの製造技術の基盤を確立するため、多様な機能が期待できる新規S-ビニルモノマー類のRAFT重合を検討した。特に代表的なS-ビニルモノマーであるフェニル S-ビニルスルフィド誘導体を用いた特殊構造高分子の創製とその応用に関する研究を展開した。主な成果を以下に示す。 新規なS-ビニルスルフィド誘導体として芳香族性を持つ複素環式化合物であるチアゾール環に着目し、2-ベンゾチアゾリルビニルスルフィド 、2-チアゾリルビニルスルフィド 、及び1,3,4-チアジアゾリルビニルスルフィドなど様々なチアゾール環を有するS-ビニルスルフィド誘導体を合成し、そのRAFT重合により構造の規制された新規ポリ (ビニルスルフィド) の合成に成功した。さらに様々な金属と錯形成が可能であり、その錯体形成に基づく電子・光機能を獲得できることを見出した。 また、反応点として利用できるブロモベンゼン部位を側鎖に有するS-ビニルスルフィド誘導体のRAFT重合とカップリング反応を用いることで、ブロモ部位に種々の電子・光機能団の導入した機能性ポリマーの新規合成を展開した。具体的には、温度応答性を付与するN-イソプロピルアクリルアミドとの両親媒性ブロック共重合体の自己組織化、及びコア架橋反応によりアクセプター性、またはドナー・アクセプター性をコアに有する温度応答性微粒子の合成に成功した。 さらに、電子供与性モノマーとしてフェニル S-ビニルスルフィド誘導体、電子受容性モノマーとして無水マレイン酸、N-置換マレイミド誘導体を用いたRAFT共重合とチオールーエン型クリック反応を組み合わせることで新規硫黄含有交互共重合体の獲得に成功した。特に、非対称性ジビニルモノマーであるN-ビニルマレイミドとの共重合により二重結合を有する側鎖部位が交互に配列する交互共重合体を選択的に官能基化する手法を確立した。
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