研究概要 |
本研究は、分子の立体構造と分子間相互作用を協同的に利用したデザイン戦略に基づき、電子供与性(ドナー)と受容性(アクセプター)のコンポーネントが、ナノスケールの精度で空間特異的に接合したナノヘテロ接合構造を構築することを目的としている。初年度である今年度は、多様なドナーとアクセプターを自在にヘテロ接合することが可能な、高汎用性分子モジュールの開発を行った。具体的には、剛直な三枚羽構造を有するトリプチセンを基本骨格として、その1,8,13位および4,5,16位のそれぞれに、異なる機能団を導入可能な新規ヤヌス型誘導体を合成した。この新規分子モジュールの1,8,13位にドナーユニットを三基導入した誘導体を合成し電気化学測定を行ったところ、ドナー単独と比べて酸化電位が負側にシフトし、酸化を受けやすくなることを見出した。すなわち、分子モジュール上で機能団を密に集積化することで、機能団が協同的に働くことが期待できる結果が得られた。また、新規分子モジュールの1,8,13位に長鎖アルコキシ基を導入した誘導体の集合構造を放射光X線回折測定により調査した結果、トリプチセン部位が入れ子状に密に集積化した層とアルキル基の層からなるレイヤー構造を形成することを明らかにした。上記のように、機能団の精密集積化を可能にする新規分子モジュールの開発に成功した。またこれを利用して、ドナーおよびアクセプター機能団を高密度集積化し、ナノヘテロ接合構造を構築するための基盤技術を開拓した。
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