研究課題/領域番号 |
24350055
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
福島 孝典 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (70281970)
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研究分担者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教 (40525573)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘテロ接合 / 自己組織化 / 分子集合体 / 有機半導体 / 有機薄膜太陽電池 / 分子性固体 / 超分子科学 / 有機化学 |
研究概要 |
本研究は、分子の立体構造と分子間相互作用を協同的に利用したデザイン戦略に基づき、電子供与性(ドナー)と受容性(アクセプター)のコンポーネントが、ナノスケールの精度で空間特異的に接合したナノへテロ接合構造を構築することを目的としている。初年度(平成24年度)に開発したトリプチセン分子モジュールのように、剛直な分子骨格をヘテロ接合のプラットフォームとして利用すれば、空間特異的に特定の官能基・機能団の導入が可能である。このアプローチにより、単分子でのヘテロ接合体を自在にデザインできるとともに、自己集合化を制御できれば、ナノスケールで高度に制御されたヘテロ接合構造体の構築が期待できる。さらに、この分子モジュールを用いれば、精緻な構造規則性を有する薄膜材料が得られる。以上の材料設計概念と観測結果に基づき、平成25年度には、トリプチセン分子モジュールに種々の官能基を導入した10種類以上の異なる誘導体を合成し、自己集合挙動を調べた。これらの検討を通じ、入れ子状の二次元集積化を可能にする官能基の種類とサイズについての知見を得た。また、作製した分子集積体薄膜の電荷輸送特性に関して、レーザーフラッシュフォトリシス時間分解マイクロ波伝導度測定法による検討を開始した。加えて、トリプチセン分子モジュール上に電子ドナーおよび電子アクセプターユニットを面選択的に導入した誘導体を合成し、色素増感太陽電池の色素としての利用について検討した。 トリプチセン分子モジュールの開発に加え、インダセンテトラオンを基本骨格とした新規ドナー/アクセプターユニットを開発し、その構造化挙動と光電子物性の検討を進めた。インダセンテトラオン骨格とドナーユニットを複合化した分子は、ポリチオフェンなどと組み合わせることにより、光電変換機能を示すことを見出し、その成果については論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに開発した分子モジュールに対して、電子ドナー/アクセプターユニットを自在に導入する合成手法を開拓することができた。また、分子モジュールの集積化によって、極めて構造規則性の高い分子性薄膜を大面積で構築することも達成している。加えて、いくつかの誘導体を用いた予備的な検討により、光電変換機能を示すプロトタイプデバイスを構築することにも成功している。よって、研究の進捗度は良好であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの結果をうけ、本年度には、ドナー/アクセプター型誘導体への展開とともに、トリプチセンモジュールの羽根の芳香環の拡張による電荷輸送特性を付与した誘導体の開発について検討する。予備的に合成したドナー/アクセプター型誘導体を用いて色素太陽電池を組んだところ、光電変換素子として機能することを確認している。このデザインを最適化し、高性能の色素分子を開発する予定である。さらに、トリプチセン骨格自体のπ系を拡張する手法の開拓にも着手している。こうして得られる分子を薄膜として精緻に集積化し、その界面を用いて有機ドナーまたはアクセプターと複合化する。それらの集合体について、キャリア移動度を含めた電子物性の評価を行う。ドナーおよびアクセプターユニットの層状集積化により、良好な半導体層の構築が達成された場合、さらに、分子モジュール上にドナー・アクセプター双方を位置特異的に導入したヘテロ接合分子の合成に着手する。ヘテロ接合分子の集積化挙動を評価し、ドナーおよびアクセプターユニットが、分子スケールの精度でヘテロ接合した層状構造体の構築に最適な分子構造を検討する。得られたヘテロ接合構造体の分子パッキング様式をX線回折により、モルフォロジーは原子間力顕微鏡や走査型トンネル顕微鏡によって調べるとともに、光電変換特性を精査する。本研究でデザインした分子群は、有機薄膜太陽電池のみならず、両極性トランジスタ用の材料として機能する可能性も高く、有機ELデバイスへの応用など包括的見地に立った展開を図る。基礎物性評価の結果を分子デザインにフィードバックし、系の改良と最適化を行う。得られた結果をまとめ成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
分子モジュールの合成研究が円滑に進行したため、有機合成用試薬を含む物品費が抑えられた。また、25年度に導入した小型冷却遠心機は、取扱業者のキャンペーン価格で購入した。加えて、プロトタイプデバイスの構築や特性評価は、共同研究先の施設を効率的に利用することで実施することができた。以上の理由により、当初の計画よりも使用金額が抑えられた。 26年度は、本研究に携わる技術職員および学生の増員を計画している。25年度に生じた次年度使用額は、その際に必要となる物品費に充てる。これにより、物質開発とデバイス作製、特性評価を加速させる。
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