研究実績の概要 |
イソプレンのリビングアニオン重合により、両末端に1,1-ジフェニルエチレン型ビニル基を有する分子量9.2万、および31万のテレケリックポリイソプレンを合成し、さらに環化反応により環状ポリイソプレン試料を合成した。その際、結び目のある環状試料とない環状試料を合成するために、環化反応を貧溶媒中、ならびに良溶媒中で行った。環化反応生成物中から、環状高分子を単離するために、両試料とも(1)貧溶媒を用いた沈殿分別、(2)SEC分取、さらに(3)臨界条件クロマトグラフィー(LCCC)分取、あるいは相互作用クロマトグラフィー(IC)分取、により純度95%以上の環状試料をそれぞれ200mg以上調製した。さらに線状、および環状2試料はヒドロシリル化反応によりジメチルクロロシリル基、あるいはメチルジクロロシリル基を導入し、分子量7,000程度のリビングポリスチレンとのカップリング反応により、ブラシ状高分子へ変換した。3種のブラシ状高分子はクロロホルム溶液としてグラファイト基板上へキャストした後、原子間力顕微鏡(AFM)により実空間観察を行った。9.2万のポリイソプレンを幹分子とするブラシ状試料からは、分子の輪郭(一次構造)を直接観察することができ、主鎖分子の一次構造が直接反映された構造が確認された。AFM観察より、良溶媒中での環化反応で生成したブラシ状環状分子中には結び目のある分子は観察されなかったのに対し、貧溶媒中で生成したブラシ状環状高分子試料中には、「三様結び目」を有する環状高分子が生成していることが確認された。一方、31万のポリイソプレンを幹分子とするブラシ状試料のAFM観察から、主鎖切断が起こり、鎖長が短くなっている分子が多いことが明らかとなった。しかし、ブラシ状環状試料の中には、三様結び目より複雑な結び目が生成していることが確認された。
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