研究課題/領域番号 |
24350057
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山子 茂 京都大学, 化学研究所, 教授 (30222368)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | カップリング反応 / リビングラジカル重合 / ラジカルカップリング反応 / ラジカル反応 / 中央官能基化ポリマー / テレケリックポリマー / ミクトアームポリマー / 制御重合 |
研究概要 |
昨年度の成果に基づき、有機テルルを用いたリビングラジカル重合法TERPで合成した種々の重合体に、ジエンやスチレンの共存下で光照射をすることで、ジエンやスチレンの挿入を伴ったカップリング体が>90%以上のカップリング効率で進行することを明らかにした。最も特徴的な反応が、ポリメタクリレートやポリアクリレート末端におけるカップリング反応である。ジエンやスチレンが無い場合は、優先的、あるいは選択的に不均化反応が進行するため、カップリング体の収率は低い、あるいはまったく得られない。しかし、ジエンやスチレンを共存することで、選択的なカップリング反応が進行した。 もう一つの特徴は、挿入されたジエン、スチレンの数を2モノマー単位が選択的に制御できる点である。そこで、官能基を持つジエン、スチレンをカップリング剤として用いてポリ(メタ)アクリル酸エステル類のカップリング反応を行ったところ、選択的にポリマー鎖の中央部分を、位置および官能基の数を制御して官能基化できることを明らかにした。実際、水酸基を持つジエンを用いたカップリング反応体においては、生成物の水酸基を開始基とするラクチドの開環重合を行なうことで、分子量と分子量分布の制御された、4分岐構造を持つミクトアームポリマーの合成に成功した。さらに、TERP開始剤として、官能基を持つ有機テルル化合物を用いて重合を行った後、官能基を持つジエンを用いてカップリング反応を行うことで、ポリマーの両末端と中央部に選択的に官能基を持つ高分子の合成も行えることを明らかにした。さらに、小分子モデル化合物を用いて、カップリング時に生成するジエン由来部位の構造の推定も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ジエンやスチレンを用いることで、本カップリング反応が極めて一般性の高い方法であることを明らかにできた点が一つあげられる。さらに、カップリング反応の際に挿入されるジエンやスチレンの数についても、アクリレート類やメタクリレート類に限られるが、厳密に2モノマー単位に制御できる点も明らかにすることができた点など、予想以上の成果を挙げている。
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今後の研究の推進方策 |
二つの方向で研究を進める。一つは、本年度に明らかにした、官能基を用いる有機テルル開始剤を用いて合成したテレケリックポリマーを用いたゲル合成への応用である。このテレケリックポリマーと多分岐の架橋剤とで選択的結合を行うことで、網目構造が理想的に構築された「理想網目ゲル」が合成できると期待できる。用いる官能基と、架橋剤との組み合わせをスクリーニングすることで、その達成を図る。 もう一つは、二官能性の開始剤を用いたTERP/RCへ展開である。二官能性開始基を用いたTERPにより生成した重合体を、希釈条件下、あるいは高濃度条件下でRCを行うことで、それぞれ環状高分子、あるいはマルチブロック共重合体が合成できると考えられることから、その実現を図る。さらに、その応用によりボトルブラシ構造やカテナン構造などのユニークなトポロジーを持つ高分子が合成できると期待できることから、その可能性を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
得られた実験結果により、実験を行う優先順位の順番が変化したため、一部の実験をH26年度に行うようにしたため。 上記実験を行うのに必要な試薬、器具類の購入費として利用する。
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