研究課題/領域番号 |
24350058
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
中 建介 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (70227718)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ナノ材料 / 自己組織化 / 超分子化学 / 分子性固体 / 有機導体 |
研究概要 |
革新的概念のかご型シルセスキオキサン(POSS)核デンドリマー配列型周期構造固体機能材料の創出と機能開拓を目的として研究を行い、以下の研究成果を得た。 1)イオン伝導性の改善のためポリエステル型POSS核デンドリマーを用い、末端基であるN-アルキルイミダゾリウム塩と対アニオンを変化させてイオン伝導性を評価したところ、平成24年に得られたイポリ(アミドアミン)型POSS核デンドリマーと比較してイオン伝導性の向上に成功した。 2)末端基にメチルイミダゾリウムヨウ素塩を導入したポリエステル型POSS核デンドリマーを合成し、これを固体電解質として色素増感太陽電池の初期性能評価を行ったところ、ヨウ素酸化還元対として機能することが示された。 3)テトラシアノキノジメタン(TCNQ)アニオンラジカルをアニオン交換法でイミダゾリウム塩末端POSS核デンドリマーに導入し、これに中性のTCNQを添加した溶液をキャストすることで得られた固体膜の導電率を評価するとともに、そのナノ構造評価を行うことで、本固体膜の界面特性・物性を明らかにした。 4)ビフェニル基を末端に有するスペーサーの鎖長が異なるPOSS核デンドリマーを合成し、それらの特性を検討したところ、スペーサーの鎖長が短い場合はアモルファス性の単一成分透明自立膜が得られることに成功した。また、カルバゾール基を末端に有するPOSS核デンドリマーを合成し、それらの特性を検討したところ、電解重合によって末端基ユニット同士の架橋が進行し、単一成分透明自立膜が得られることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初実施計画で予定したリチウムイオン伝導性に優れた構造最適化に関しては、種々の分岐鎖およびN-アルキル鎖を有するPOSS核デンドリマーを用いた検討によって、イオン伝導率の向上に成功し、将来の固体電解質として可能性を示すことができた。また、色素増感太陽電池用固体電解質へ適用できることも示すことができた。さらに、POSS核デンドリマーで構成される導電性固体膜のナノ構造評価によって導電性ナノ結晶ネットワーク構造が形成されていることが確認できるなど、複数の成果が得られた。一方、当初計画した発光性機能性ユニット導入による固体発光特性評価に関しては固体発光する材料を得えることができなかったが、カルバゾール基を末端に有するデンドリマーを電解重合法によって自立膜が得られることを見出し、興味ある電気化学特性を示すことを見出した。 以上のことから本研究課題の当初研究目的と照らし合わせて、おおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
N-アルキルイミダゾリウム塩POSS核デンドリマーが末端リチウムイオン電池や色素増感太陽電池用の優れた固体電解質として応用可能レベルまで性能向上を図ることを目的とし、得られた材料のナノ構造評価を共同研究によって評価することで、そのフィードバックにより構造最適化を押し進める。また、末端に積層もしくは凝集により高機能電子・光学特性が発現する機能性ユニットを導入したPOSS核デンドリマーを設計合成し、自己組織化を主たる駆動力とせず、単にこれを配列させるだけで、剛直なシリカ成分により有機成分の空間的構造が保持され、末端基間の相互作用を駆動力とした分子レベルの三次元的機能性ネットワークが構築されることで、これまでのブロック共重合体を用いた自己組織化によるミクロ相分離構造材料の限界を越える1 nmオーダーの微細な領域に置ける相分離構造の自在デザイン可能な革新的概念のPOSS核デンドリマー配列型周期構造固体機能材料の創出と機能開拓を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね当初の計画通りに研究費を使用したが、3月における消耗品が計画より少なくなったため、5千円弱ほど余りが生じた。 次年度は担当する学生を増やす予定であることから、次年度に合算して試薬等の消耗品費に充当する。
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