研究課題/領域番号 |
24350065
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 和之 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (20282022)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | キラリティー / 磁気キラル二色性 / 流体力学 / 光化学 / ホモキラリティー |
研究概要 |
本研究では、光・磁場・流体運動により誘起される分子キラリティーに基づく新規キラル科学の開拓を目的とする。具体的には、生体分子や光合成細菌の磁気キラル二色性を測定し、(1)生命のホモキラリティーと磁気キラル二色性の関係解明、(2)新規不斉合成法の開拓等を行う。また、エバポレーター回転で生成するキラルJ会合体を様々なスケールで解析することで、(1)流体運動と超分子ナノキラリティーの関係解明、(2)キラルJ会合体を不斉場とした単分子の光学活性誘起等も試みる。これらの研究を遂行することで、光・磁場・流体運動を利用した新規不斉合成法を開発するとともに、生命のホモキラリティー解明への手掛かりを得る。 今年度は、流体運動で誘起される分子キラリティーに関して以下の知見を得た。水と同程度の密度を有するポリスチレン粒子の動きを撮影することで、エバポレーター回転で生じるナスフラスコ内のmm~μmの水の動きを可視化し、巨視的流体運動を流体力学的に理論解析した。量子化学計算を用い、吸収・CDスペクトル・AFM等のデータを完全に再現できる数十nmオーダーのキラルJ会合体の構造を決定することに成功した。その結果、流体運動の捻れと超分子の捻れを比較し、それらの捻れの向きが一致することを見出した。これより、流体運動が超分子キラリ ティーを誘起するメカニズムについて初めて提案することに成功した。 また、芳香族化合物のππ*と励起子キラリティーに基づく磁気キラル二色性を利用することで、ZnクロロフィルJ会合体における磁気キラル二色性の観測に成功した。これは、2例目のππ*による磁気キラル二色性であり、論文はChem.Commun.のa Hot articleに選出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
流体運動がどのように分子キラリティーに影響するか?は、長年解明が望まれていた難問であったが、今回、流体運動の捻れと超分子キラリティーの関係を初めて明らかとしたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、流体運動と超分子ナノキラリティーの関係を解明できたので、生体分子や光合成細菌の磁気キラル二色性を測定し、生命のホモキラリティーと磁気キラル二色性の関係解明、新規不斉合成法の開拓等を行う。これらの研究を遂行することで、光・磁場・流体運動を利用した新規不斉合成法を開発するとともに、生命のホモキラリティー解明への手掛かりを得る
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次年度の研究費の使用計画 |
上述した推進方策に基づき、生体分子アミノ酸、ペプチドにおける磁気キラル二色性を測定し、生命のホモキラリティーと磁気キラル二色性の関係について研究を進める。さらに、今年度本科学研究費補助金で購入したパルス磁場発生装置(~10T)と分光光学系を組み合わせることで、パルス強磁場下磁気キラル二色性測定装置を開発し、測定を行う。
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