研究実績の概要 |
前年度の検討を踏まえ、申請者が以前に開発したトリフェノール型ホスト分子 (Abe, H.; Aoyagi, Y.; Inouye, M. Org. Lett., 2005, 7, 59-61.) を基本のパーツとして利用し、糖を認識できるカプセル状ホスト分子の開発を行った。トリフェノール型ホスト分子にピリジン環を3個導入して三座配位子とし、Pd(II) 前駆体と 2:3 のモル比で組み合わせると、L2M3 カプセル型錯体ができるところまで分かっていた。本年度は (1) フェノール環上の4位の側鎖を変えることで脂溶性と水溶性のカプセル型錯体をそれぞれ合成できたことと (2) 配位部位としてピリジン環に代え、キノリン環を用いることで構造にねじれ要素が入ったカプセル型錯体を合成できた、という2点を達成した。錯体の形成は ESI-MS や DOSY-NMR 測定により確かめた。このように、C3v対称の基本パーツを基にD3hあるいはD3対称のカプセル型錯体を得るまでの手法を確立できた。得られたカプセル型錯体が持つ分子認識機能について検討を行い、各種オクチルグリコシド、グルコサミンなどの糖誘導体、ジカルボン酸などをゲストとして取り込むことが分かった。以上の成果は IKCOC-13 や日本化学会第96春季年会などの学会で発表した。結晶構造解析も含め、早々に論文として発表するべく、実験データの収集の詰めと最後のとりまとめを行っている。
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