研究課題/領域番号 |
24350071
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
津田 哲哉 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助教 (90527235)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | イオン液体 / 加速器電子線 / ナノ材料 / 燃料電池 / 次世代電池 |
研究概要 |
近年、様々な分析技術の著しい発展やナノ材料合成技術の確立に伴い、ナノ粒子材料に対する期待は年々大きくなっている。一方、室温イオン液体は不揮発性、難燃性、電気化学窓が広いなどの物理化学的性質を有することに加え、比較的容易に再利用が可能であるため、環境調和型機能性溶媒として注目されている。最近では、室温イオン液体特有の局所構造やナノ粒子-イオン間の相互作用のため、安定化剤を添加することなくナノ粒子を調製できることから、室温イオン液体を利用した多種多様なアプローチによるナノ粒子の調製が数多く報告されている。研究代表者らが開発した室温イオン液体-加速器電子線照射法はイオン液体の特徴を利用したナノ粒子調製法であり、ナノ粒子の安定化剤はもちろん、金属イオンの還元剤すら添加することなく、様々なナノ粒子を大量に合成することができる技術である。平成24年度は、この室温イオン液体-加速器電子線照射法を用いることにより、従来の方法では調製が困難であるシリコンナノ粒子や白金-ニッケル合金ナノ粒子の合成を試みた。シリコンナノ粒子については大気雰囲気中において容易に酸化されるため、そのキャラクタリゼーションは困難であったが、シリコンナノ粒子の合成に成功したと言える結果が得られた。平均粒径は7~10nm程度と非常に小さく、その大きさは添加するシリコン塩の種類に依存していた。一方、白金ニッケル合金ナノ粒子については、適切なNi塩を選択することで合金ナノ粒子の調製が可能となった。得られた白金-ニッケル合金ナノ粒子のキャラクタリゼーションは、電子線回折およびエネルギー分散型X線分光分析により行った。また、白金-ニッケル合金ナノ粒子と炭素材料(例えば、単層カーボンナノチューブ)から成るコンポジット材料を作製するための方法を確立することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ナノ粒子の安定化剤を用いることなく、次世代エネルギーデバイスへの応用が期待できるシリコンおよび白金-ニッケルナノ粒子をイオン液体-加速器電子線照射法により得ることができた。また、得られたナノ粒子をカーボンナノチューブなどの炭素材料に担持するための方法を確立することにも成功した。これらの点から本研究は1頂調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体-加速器電子線照射法により得られたナノ粒子を様々な炭素担体に担持するためのより良い条件を探索するとともに、得られたコンポジット材料を実際のエネルギーデバイスに組み込むことで、そのエネルギー材料としての評価を行う。また、イオン液体-加速器電子線照射法に最適なイオン液体系の開発や非金属合金系ナノ粒子の合成についても研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は本年度以降の研究活動を支障なく行うため、意図的に平成24年度の使用額を抑制した結果である。本年度はイオン液体-加速器電子線照射法に最適なイオン液体系の開発についても研究対象とするため、その評価を容易にする比重密度計を平成25年度中に購入する予定である。残った予算については、実験を遂行する上で必要となる物品の購入費用や得られた成果を学会で報告するための旅費に充てる予定である。
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