研究実績の概要 |
本研究では、レアメタルに頼ることなく、入手しやすい軽元素(C, N, O, Si, Sなど)のみによって構成され、様々な物理刺激(熱、光、力)および化学刺激(ガス、有機溶剤、イオンなど)によって光・電子物性を劇的に変換する、ダイナミック発光素子の創成を目的としている。異種の刺激を同時に入力することによって、ダイナミック発光素子を求核や味覚のような多元的複合センシングデバイスへと応用することが究極の目的である。 本年度は、昨年度に引き続き、アントラセン、スチルベン、ジフェニルブタジイン、オリゴチオフェンなどの蛍光性機能部位に直接あるいはフェニレン基などのスペーサーを介してスルホン酸基を導入した機能団分子を合成した。さらにこれらの分子を、種々の一級アミンと混合することによって体系的に有機塩を作成し、これを結晶化することによって機能団分子が様々に配列した超分子結晶を得た。結晶の構造は単結晶X線構造解析、粉末X線回折、熱量分析、熱重量分析等によって明らかにした。また、結晶の光学特性を明らかにするために、蛍光スペクトルの測定、蛍光量子収率と蛍光寿命の決定を行った。トリフェニルメチルアミンのような立体的にかさ高いアミンを用いた場合には、発光特性を有する多孔質フレームが構築でき、フレームがつくる空間は、結晶化の際に用いる鋳型分子に依存して、多様に変調できることを明らかにした。さらに、これらの多孔質フレームは、特定の化学種およびガスを構造依存的に取り込み、その吸着挙動は蛍光発光によって追跡できることを明らかにした。
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