研究課題/領域番号 |
24350073
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
持田 智行 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30280580)
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研究分担者 |
高橋 一志 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60342953)
桑原 大介 電気通信大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50270468)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | イオン液体 / 金属錯体 / スピンクロスオーバー / 柔粘性結晶 |
研究概要 |
本研究は、金属錯体からなるイオン液体の物質開発と機能開拓を目的とする。これらは金属錯体とイオン液体の特性を併せ持つ多機能液体である。 今年度は第一に、シッフ塩基系錯体のイオン液体化を進めた。acacen配位子を有するカチオン性Fe(III)錯体を用いて、液体状態でスピンクロスオーバーを起こすイオン液体を実現した。比較のために、アニオンのみが異なる結晶性錯体を合成し、配位構造を明らかにした。この固体はイオン液体と同様に、協同効果のない緩やかなスピン転移を起こした。 第二に、錯体系イオン液体の基礎研究として、一連のフッ素系アニオンを有するコバルトセニウム塩の相系列、結晶構造、分子運動性を検討した。これらの物質系において、アニオンのフロロアルキル鎖長に依存して顕著な偶奇則が発現することを見出した。鎖が奇数の場合はカチオンとアニオンが分離積層、偶数の場合は交互積層した結晶構造を形成した。前者では、融解エントロピーの総和が大きく、かつ高温で柔粘性結晶相が発現した。 第三に、外場応答性イオン液体を基盤とした機能性フィルムを開発した。前年度に開発したニッケル錯体系イオン液体を用いて、これらにゲル化剤を加える方法、およびナフィオン膜に取り込ませる方法によって応答性フィルムを形成した。後者のフィルムは、溶媒蒸気への暴露や溶媒への浸漬によって、溶媒のドナー数に応じた色変化(赤~青緑)を起こした。この膜にアルコールを取り込ませることにより、サーモクロミズムを示すフィルムを実現した。 このほか、キレート錯体系イオン液体研究の継続として、パラジウム錯体系イオン液体を合成し、熱物性・結晶構造・化学反応性を検討した。あわせて、アルキルオクタメチルフェロセン系イオン液体の物質開発を継続した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究で、特徴ある磁気機能を示すイオン液体が実現した。あわせて、液体をフィルム化して機能を付与する方法が見出された。これらは錯体系イオン液体の展開可能性を大きく拡張するものである。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を基盤とし、錯体系イオン液体の基礎物性の解明、および機能性の開拓(磁気物性の展開、ガス吸着性の開拓)をより広範に進める。加えて、フィルム化手法を適用した新機能開拓を進める。
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