研究課題/領域番号 |
24350075
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
久保 由治 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (80186444)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 自己組織 / 金ナノ粒子 / パラジウムナノ粒子 / 触媒 / グリーン反応 / ボロン酸 / 白色発光 / ケモセンサー |
研究概要 |
多価ボロン酸類と多価アルコール類との逐次的なボロネートエステル化反応は温和な条件で多彩な階層構造体の形成を導き,その界面特性を生かした機能材料の創出が期待される。当該年度で得た成果を以下に記す。 1) ナノパラジウム及びナノゴールド担持ボロネートマイクロ粒子の合成と触媒機能:本研究課題で取り扱う触媒系がグリーン触媒として働くかどうかに興味がもたれた。モデル反応として,ファインケミカル反応で重要視されているシンナムアルデヒドの水素化反応に適用した。平均粒径1.5 nmのもつPdナノ粒子を担持させたボロネート粒子の共存下,水中,常温・常圧(水素圧;0.1 MPa, 25°C)の条件で当該反応は速やかに進行し,6時間後転化率100%で,C=C部分の還元により生成するヒドロシンナムアルデヒドを高選択的(94%)に与えることがわかった。使用溶媒をメタノールに変更したところ,反応選択性をほぼ維持したまま転化率の向上が観測され,再利用特性を持つことが見出された。これらの結果から,当該触媒はファインケミカル反応のグリーン化に寄与するものと思われる。一方,金ナノ粒子を担持させたボロネート触媒は,水中,水素圧0.8MPa,80°Cで選択的にC=O部分を還元し,シンナミルアルコールを好収率で与えた。 2) 白色発光ケモセンサー粒子の提案:ベンゼン-1,4-ジボロン酸とペンタエリスリトールの逐次的脱水縮合反応から生成するボロネートマイクロ粒子は,界面に構成ポリマー末端の水酸基もしくはボロン酸基を有する。そこで,ボロン酸基をもつ赤・緑・青の各蛍光色素をグラフトさせ界面に組織したところ,白色発光粒子の調製に成功した。さらに,それら色素の一つに金属イオン配位機能を付与させた粒子は,水中で金属イオンの検出を可能にする白色発光ケモセンサーになり得ることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
階層的ボロネートマイクロ自己集合体は金属ナノ粒子の担持を可能にし,得られた組織体は不均一触媒として複数のファインケミカル反応に適用できることがわかった。また,今年度の研究において新しい発見があった。関連Pd担持体ではあるが,水やメタノールといった環境に優しい溶媒を用いて,周囲条件下(0.1 MPa, 25°C)でシンナムアルデヒドの高選択的水素化反応を達成した点は成果として強調したい。その一方で,キラルの界面をもつボロネート集合体の調製は未だ達成していない。
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今後の研究の推進方策 |
何故,当該ボロネート集合体が触媒担体として機能するのか機構的に不明な点が多い。その理解を深めるとともに,多彩な形態をもつボロネート集合体の提案を継続し,機能化開拓に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
大型物品(リサイクル分取HPLC)が当初の見込み額よりも少ない費用で納品されたため,次年度使用額が生じた。 当該次年度使用額は次年度の物品費に加え,キラルな界面を有するボロネート粒子の調製などに必要な消耗品購入費用に充てる。
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