研究実績の概要 |
ボロン酸の動的共有結合性を用いた階層的自己組織化により単分散性粒子が得られ,不均一触媒の担体として機能することを見出している。今年度は,キラルなV字型トレーガー塩基(TB)を分子部品とするボロネート担体の構築を目指した。具体的には,2位,8位にボロン酸基を有する誘導体の合成を試みた。既報に基づいて, 4-ブロモアニリンをトリフルオロ酢酸中, パラホルムアルデヒドと反応させ, 得られたラセミ体Br2TBをジベンゾイル-L-酒石酸で光学分割しee > 99%の光学純度をもつ (R,R)- Br2TBを得た。次に,BuLiとトリメチルホウ酸を用いてボリル化をおこなったところ,目的の構造体の形成は確認されたが, 光学異性体分離用カラムを用いたHPLC測定から,ラセミ化が起こってしまった。そこで,キラルな(R,R)- Br2TBを分子部品を用いることに変更し,多孔性有機ポリマーの合成を検討している。一方,ペンタエリスリトールと1,4-ジベンゼンボロン酸との逐次的脱水縮合から組み上がるボロネート粒子の表面にPdを担持させた(Pd-BP)。そのPd-BPと不斉修飾剤としてシンコニジン(CD)を共存させ,α-フェニル桂皮酸 (α-PCA) の水素化反応を実施した。その結果,(S)-2,3-ジフェニルプロピオン酸が優先的に得られたことに対して,擬鏡像異性体であるシンコニン(CN)を添加した場合,その鏡像異性体である(R)-2,3-ジフェニルプロピオン酸が主生成物して得られることがわかった。
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