研究課題/領域番号 |
24350078
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
江口 正 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60201365)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 糖質環化酵素 / グリーンケミストリー |
研究概要 |
2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)合成酵素は、グルコース-6-リン酸(G-6-P)を基質とし、NADを補酵素として、炭素6員環化合物、DOIへの変換反応を触媒する酵素である。DOI生産のためには、基質としてG-6-Pの供給が必要である。そこで、G-6-Pの供給法としてポリリン酸グルコキナーゼ(PPK)により調製を試みた。ポリリン酸グルコキナーゼは、安価なポリリン酸をリン酸供与源として、グルコースの6位を直接リン酸化する酵素である。PPKによるG-6-Pの供給が可能であれば、2つの酵素を利用した1ポットの反応で、DOI生産が可能となる。まず鍵となるPPKの入手が必要であり、そのため入手容易でPPKの存在が予測可能であった放線菌Strepomyces coelicolorのPPK遺伝子のクローニングを行い、大腸菌での発現,酵素精製を行った。SCO5059がポリリン酸グルコキナーゼの機能を有し、BtrCの共存下で、グルコースとポリリン酸からDOIを生産し得ることを明らかとした。また、SCO5059はポリリン酸に対してだけではなく、ATPに対しても酵素活性を有してはいたが、アロステリック効果が観測され、微生物の生体内では、基質濃度により制御されている酵素であることが伺えた。さらに精製したPPKとDOI合成酵素を用いてのDOI生成を検出したところ、予想通りDOIの生成が確認できた。また、SCO5059とBtrCを精製用レジンに固定化した状態でも酵素活性を有すことがわかり、酵素の再利用が可能であることを示した。 また、今年度はDOIの大量合成を念頭に置き、DOI合成酵素活性の高い酵素の選出を目指し研究したところ、Bacillus circulans ATCC21558由来のDOI合成酵素が最も高い酵素活性を示すことが分かった。具体的にどのようなアミノ酸残基が影響を及ぼしているかについては、結晶構造解析など分子レベルで確認することで詳細な情報が得られると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の本年度の計画であったポリリン酸グルコキナーゼのクローニング、発現および2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素と組み合わせての2-デオキシ-scyllo-イノソースの調製については、予定通り進行した。いままでBacilllus circulansおよびいくつかの放線菌から2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素を得ていたが、より有効且特異的な酵素遺伝子を発見する可能性を考慮し、他の微生物起源の同様な酵素を探索した。その結果、アミノグリコシド抗生物質生産菌の中にBacilllus circulans由来の2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素よりも約1.5倍の高い酵素活性を持つ酵素を発見した。以上のことを判断し、本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、好熱菌由来のポリリン酸グルコキナーゼ遺伝子のクローニング、大腸菌での発現を行いより効率的な2-デオキシ-scyllo-イノソースの調製を目指す。また、2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素は、一次代謝酵素であるシキミ酸代謝系のデヒドロキナ酸合成酵素とアミノ酸レベルで25-30%程度の相同性があることが知られており、そこでさらにより効率的な2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素の取得を目指し、好熱菌のデヒドロキナ酸合成酵素のアミノ酸配列を参考に2-デオキシ-scyllo-イノソース合成酵素の耐熱・安定化を目的にアミノ酸変異による耐熱化を検討する。
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