今年度は、グルコースから2-デオキシ-scyllo-イノソース(DOI)へのワンポットでのより効率的な酵素合成系を設計した。安定かつ高効率でグルコース-6-リン酸を与えるポリリン酸グルコキナーゼ(PPGK)を、放線菌Streptomyces coelicolor A3(2)由来、アミノ酸生産に工業的に利用されている放線菌Corynebacterium glutamicun由来(Cgppgk)、好熱性菌Thermobifida fusuca由来より選定することにし、グルコースからグルコース-6-リン酸への変換効率を検討した結果、Cgppgkを用いたときに最も高い比活性0.76 Umg-1[µmol/min・mg]が観測されたため、Cgppgkを酵素合成系に用いることにした。PPGKのリン酸供与体となるポリリン酸に関しては、ポリリン酸の重合度6、25、60-70のポリリン酸での反応を検討し、ポリリン酸25(PolyP25)を用いることにより、安価であり効率的なグルコース-6-リン酸の生成につながった。さらに、Bacillus circulans 由来DOI合成酵素BtrCと組み合わせ、グルコース、PolyP25、Mg2+、および酵素の濃度や緩衝液を種々検討した結果、25 mM リン酸緩衝液(pH 7.7)中、グルコース5mM、ポリリン酸25 3.0 mM、MgCl2 0.5mM、NAD+ 0.3 mM、cgppgk及びBtrC 7.5 µMの条件の時、24時間ワンポットで完全に反応が進行し、安価なグルコースとポリリン酸を原料としてDOIを収率90%以上という効率的に酵素合成する系を確立することができた。
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