研究課題/領域番号 |
24350079
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
榧木 啓人 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (20572704)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | グリーンケミストリー / 二酸化炭素固定 / 分子触媒 / ウレタン / 金属錯体触媒 / 含窒素へテロ環カルベン / カルボキシル化 / カルバミン酸 |
研究実績の概要 |
本研究は、二酸化炭素から高付加価値化合物への効率的変換手法を確立する目的で、塩基性有機分子と二酸化炭素の付加体の求核性を足がかりとするウレタン・カーボネート合成法の開発を行っている。本年度は、求核性の低いアミン基質に対するカルボキシル化を実現する触媒設計の一つとして、金属/プロティックアミン配位子の協同作用に基づく芳香族アミン類の活性化について検討した。 その結果、8族および9族金属の協奏機能アミド錯体が、NHインドール類の不均等開裂を促し、対応するインドリル錯体を与えることを見いだした。さらに、アミド錯体の構造修飾により、二酸化炭素を用いるインドールのN-カルボキシル化反応が触媒的に進行することを明らかにした。現時点では塩基の添加を必要とするものの、1-インドールカルボン酸が選択的に得られ、化学量論量のルイス酸等の添加を必要とする類似の反応系に比べ、温和な条件(50 °C)での触媒系の構築に成功した。 一方、芳香族アミン類の研究過程で、アニリンのオルト位にアルキル基をもつトルイジン誘導体に関し、N-H結合の不均等切断がアセタトイリジウム錯体によって進行することを見いだした。反応過程で二酸化炭素の付加は達成されなかったものの、分子内C-H結合切断によってアザイリダサイクルを形成し、新規な二核錯体が生成物として単離された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、二酸化炭素ユニットの求核的導入を基軸とするカルボキシル化反応の開発研究として、(1)プロトン性アミンと二酸化炭素から形成されるカルバミン酸誘導体の炭素―炭素不飽和結合に対する付加反応、(2)カルバミン酸を生成しない非プロトン性アミンのカルボキシル化を可能にするN-ヘテロ環カルベン―二酸化炭素付加体の有機触媒反応、(3)求核性の乏しい芳香族アミン類の活性化に有効な協奏機能触媒系の設計を行い、それぞれ所定の目的を達成する成果をあげてきた。 本年度の研究成果は、International Conference on Organometallic Chemistry (ICOMC 2014)やInternational Conference on Coordination Chemistry (ICCC-41)などの国際会議において発表するとともに、アメリカ化学会が発行する専門雑誌であるOrganometallics誌および日本化学会速報誌Chemistry Lettersに投稿し、論文掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、研究は概ね順調に進展しているが、残された研究期間でより反応性の乏しい基質のカルボキシル化反応に挑戦するとともに、これまで開発した触媒系のメカニズムについても丹念に明らかにし、今後の触媒設計に有効な基礎的知見を得ることが重要と考えている。 例えば、本年度までに11族金属錯体を触媒とする不飽和アミンの環化カルボキシル化反応を見いだし報告しているが、基質や金属の違いにより触媒効率が大きく変化することがわかっている。これらの触媒中間体合成によって反応性を理解できれば、触媒メカニズムの解明につながる学術的意義が大きい。 そこで、より難度の高い低求核性基質の付加や、炭素―炭素二重結合へのカルボキシル化触媒の設計を継続して実施するとともに、11族金属アルケニル錯体を用いた反応機構解析にも研究展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度、試薬器具類等の消耗品未購入分を繰越した。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究費と合算して消耗品物品購入に使用する計画である。
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