研究実績の概要 |
本研究では、二酸化炭素から高付加価値化合物への効率的変換手法を確立する目的で、有機塩基と二酸化炭素から生じる付加体の求核性を利用したウレタン・カーボネート合成法を開発した。本年度は、これまで系統的に研究してきたアミンと二酸化炭素から生じるカルバミン酸類の触媒的付加反応によるウレタン合成に関連し、特に金錯体による不飽和アミン類の変換過程について、素反応レベルでの触媒機構論的な理解を深めた。 当グループの先行研究をもとに、計算化学に基づく考察が他グループにより報告(R. Yuan, Z. Lin, ACS Catal. 2015,5, 2866-2872)されたことを受け、速度論実験等により錯体化学的な検証を重ねた。その結果、提案されたカルバミン酸の不飽和結合に対する求核付加過程が反応の律速段階ではなく、その後に生じる金―炭素結合のプロトン分解による生成物の遊離過程が、触媒活性を支配していることを裏付ける結果を得た。同様の議論は類似の環化カルボキシル化反応に有効な銀錯体触媒系にもあてはまることが分かった。 これらの基礎的な知見は、環化カルボキシル化反応の基質拡張や今後の新たな触媒設計における重要な指針となる。
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