研究課題/領域番号 |
24350081
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 正男 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (70302239)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ヘムオキシゲナーゼ / ヘム / 酸素活性化 / ヘム分解酵素 |
研究概要 |
黄色ブドウ球菌ヘム分解酵素IsdG及びIsdIのヘム分解代謝物解析を行い既報の2価鉄及びスタフィロビリンの他にメソ位の炭素原子がアルデヒドとして放出されることを見いだした。本研究で明らかになった結核菌MhuDのヘム代謝産物マイコビリンにおいては開裂部の炭素がアルデヒド基として保持されていることと考え合わせると、MhuD、IsdG及びIsdIによるヘム分解反応においては、メソ位がアルデヒド基となり、IsdG及びIsdIでは更にそのアルデヒド基が放出される事を確立した。MhuD, IsdG/Iヘム分解反応は既知のHO反応とは異なりCOを発生ぜずにアルデヒドと変換する新規ヘム分解反応であり、MhuD, IsdG/Iの構造的特徴である「ヘムの異常な歪み」が新規ヘム分解反応に深く関わっていると考えられる。また、MhuD酸素複合体の共鳴ラマン及び鉄3価型のEPRを測定し、ヘムの歪みが、鉄-酸素、酸素-酸素伸縮振動や、鉄の電子状態に及ぼす影響を解明した。 HO研究においては、ヘムを結合していない酵素本体の結晶構造解析を行い、ヘム解離にともない近位へリックスが解けてコイル状になることを見いだし、その構造の妥当性を分子動力学により確定した。更にヘム代謝産物鉄3価ビリベルジン複合体、ビルベルジン複合体の結晶構造のみならずそれらの中間体の結晶構造解析にも成功した。これらによりHOによるヘム結合反応機序、鉄ビリベルジン錯体複合体からの鉄放出過程の解明を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IsdG/I反応産物解析の成功は大きな成果であり、アルデヒド生成がMhuD反応 isdG/I反応に見られたことから、ヘムに異常な歪みと新規ヘム分解反応の関連が明らかとなった。 J. Biol. Chem.誌に掲載されたヘムを含まないHO、鉄ビリベル錯体複合体、ビリベルジン複合体の結晶構造解析及び分子動力学解析論文は掲載論文中トップ2%のPaper of the Weekに選ばれたことはこの成果の重要性を明確に示している。また前年度にJ. Biol. Chem.に発表したMhuDヘム分解反応論文はBest of JBC 2013 (2013年に掲載された論文3万報のトップ22報) に選ばれ、申請者らの研究が国際的に見て非常に高いレベルであることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
酸素結合型MhuD, IsdG/Iの酸素結合様式を共鳴ラマン散乱により決定し、さらに1電子還元によりパーオキソ種の生成を低温還元法により確定する。メソハイドロキシヘムMhuD複合体を作成し、MhuDヘム分解反応初期過程を決定する。 HO研究では、ハイドロパーオキソ、メソハイドロキシヘム中間体の結晶構造解析を終了、迅速凍結よりハイドロパーオキソベルドヘム中間体の存在をメスバール分光学により決定する。これらによりHO反応の集大成を成し遂げる。
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次年度の研究費の使用計画 |
HO ハイドロパーオキソ種結晶構造解析実験の一部を次年度に延長するために生じた。 本年度は、当初より計画していた、酸素結合型MhuD, IsdG/Iの共鳴ラマン散乱解析、さらに1電子還元によりパーオキソ種の生成の確定に加えて、昨年度から繰り越して研究を進めているHOハイドロパーオキソ、メソハイドロキシヘム中間体の結晶構造解析を完結する計画である。
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