アデニン(A)のイノシン(I)への編集、そしてシトシン(C)やAのメチル化など、RNAは転写後100種類以上の化学修飾を受けていることが知られる。これらRNAのエピジェネティックな化学修飾は、様々な生命現象を制御していることが明らかになりつつあり、細胞内で発現している極微量のRNAから、そのエピジェネティックな化学修飾を検出・定量する新技術の開発が望まれている。本研究課題では、ターゲットRNAを1分子レベルで解析し、極微量のRNAからエピジェネティックな情報を失うことなくそのまま迅速に読み出す新技術の開発を目指す。非常に小さな構造の違いを読み出すため、DNA/RNAの電荷移動特性が、配列、および、核酸の化学修飾により変化することに注目した。一つ一つのDNA鎖に注目すると、蛍光分子は通常、光を吸収し蛍光を放つ明状態(ON状態)にあるが、近傍の核酸塩基と電子移動が進行すると一電子還元された状態となり、光を吸収しても光らない暗状態(OFF状態)へと移行する。DNA二本鎖中に注入された正電荷は、DNA内電荷移動を経て、最終的に電荷再結合が進行し、再びON状態へと戻る。ここで、暗状態の時間の長さ(OFF time)が、DNAの電荷移動特性を反映した電荷分離寿命(τ)と一致する。本系をRNAへと発展し、RNAの配列、および、化学修飾をblinkingにより1分子レベルで検出する手法開発を目指した。26年度までの研究により、蛍光分子を修飾したDNAをプローブとして用いて、DNA発ガンに深く関わるRNA配列中の点変異を極微量のRNAをターゲットとして測定可能とした。27年度は、プローブDNA配列の改変により、種々のoff timeを有するblinking系の構築に成功し、より高感度にターゲットRNAを検出可能となった。
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