これまでの検討から、「構造多様性」が抗体タンパク質に共通する性質であることが明らかになり、取得したスーパー抗体酵素にも同様の現象が現れている。これはロット差の大きな原因となることから、実用化のためには構造を均一化した上で各クローンの性質を明確化する必要がある。そこで、ヒト軽鎖型スーパー抗体酵素に共通するユニットである「定常領域」を単独で発現させて、軽鎖の構造多様性との関連を調べた。また、in vitro感染抑制試験で効果を示し、核酸分解能を持つTクローンについて、キャラクタリゼーションを進めるとともに、X線結晶構造解析に向けたConstructの作製と高純度精製を進めた。 1. 軽鎖定常領域の発現・精製と機能解析 軽鎖定常領域遺伝子をpET20b(+)ベクターに組み込んで、大腸菌BL21(DE3)pLysSで発現させた。可溶性画分を調製後、軽鎖全長と同じくNi-NTAカラムクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーによる二段階精製を行った。この精製過程に於いて金属イオンを取り込ませた場合との陽イオンクロマトグラムのパターンの比較や金属イオンの取り込み量を調べると、L鎖全長の場合と全く同じ挙動を示したことから、構造多様性には定常領域が強く影響していると思われた。 2. Tクローンの機能解析と結晶構造解析に向けた高純度精製 核酸分解に対するpHの影響を調べると、pH5以下の低いpHで分解が起こることが分かった。これは、スーパー抗体酵素を含めてこれまでに報告されている核酸分解型抗体酵素には認められない性質であった。現在、活性部位を明らかにするために変異体の作製と、これらの核酸分解活性の測定を進めている。また、X線結晶構造解析のためにはHis-tagを外す方が有利であることから、His-tagを外したConstructを作製した。結晶化に向けた高純度精製を進めているところである
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