研究課題/領域番号 |
24350086
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
北川 禎三 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 特任教授 (40029955)
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研究分担者 |
小倉 尚志 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 教授 (70183770)
長友 重紀 筑波大学, 数理物質系, 講師 (80373190)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 生物物理 / 蛋白質 / シグナル伝達 / 生体分子 / 分子認識 / 振動分光 / 共鳴ラマン散乱 |
研究概要 |
ヒト脳にあって概日リズムを作るNPAS2と云う蛋白は、そのPAS-Aドメインにヘムを持つCOセンサー蛋白で、ヘム鉄にCOが結合すると転写活性が変化する事で機能を果たす。先に我々は、単離したPAS-Aドメインに対して、ヘムの軸配位子がHis119とcys170であると共鳴ラマン法で決めたが、そのドメインに本来繋がっているbHLHドメインが繋がると、軸配位子がHis119とcysl71に変わる事を見つけたので、その事に焦点を合わせて新たに報告した。02センサー蛋白である緑膿菌のHemATは、酸素に向かう走光性のシグナル伝達系にあるセンサー蛋白である。ヘム鉄のリガンド脱着と蛋白質の動きの関係を調べるために、全長の野生型及びY70F異性株HemAT及びセンサー部分だけの蛋白について、CO結合形の光解離後のダイナミクスを、時間分解紫外共鳴ラマン分光法を用いて調べた。Trp132(G-helix),Tyr70(B-helix),Phe137(G-helix)のラマンバンドの強度変化は、CO解離数百ナノ秒後に起こり始め、50マイクロ秒後に回復に向かった。これより、ヘムへのリガンドの脱着はB及びG-helixのコンフォメーション変化を通して作用部位に伝達されると結論した。ヒトヘモグロビンの3つのTrp残基それぞれの近紫外CD(円2色性)スペクトル及び紫外共鳴ラマンスペクトルを変異株との差スペクトル法で決め、それらのR→Tの4次構造変化によるスペクトル変化を決めた。α14及びβ15TrpはRでもTでも負のCDバンドを与えたが、β37TrpはRで正のCDを与えTではそれが弱くなった。共鳴ラマンスペクトルより、β37Trpの変化はTで水素結合が強くなるためである事がわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ヘモグロビンの紫外共鳴ラマンについては3報の論文を国際誌に発表し、ガスセンサー蛋白のNPAS2やHemArについても国際誌に成果を発表した。シトクロム酸化酵素をはじめ、他の金属酵素による酸素活性化機構に関する共鳴ラマン分光の研究成果が数多く得られ、この点に関して当初計画以上に進展した。
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今後の研究の推進方策 |
NOセンサー蛋白の可溶性グアニレートシクラーゼ(sGC)及びそのモデル蛋白について詳しく調べると共に、ヒトヘモグロビンのFe-His結合を持たないcavity mutantについて、紫外共鳴ラマンでリガンド脱着によるサブユニット界面の構造変化を詳しく調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
重水素化ラベルヘムを蛋白に再構成する実験が予定どおり進まなかったことにより、次年度使用額が発生した。次年度は、中国、吉林大学のYeubin Zhang博士がsGCのβ(#1-185)とβ(#1-385)及びsGCのβのモデルとなる、バクテリアのH-NOX蛋白を兵庫県立大学に持参し、その共鳴ラマンスペクトルを測定するという共同研究を進める。
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