研究実績の概要 |
昨年度に得た主な研究成果を以下に示す。 ①c-di-GMPのレセプターとして我々が本研究の一環として共同研究で発見したSTINGは、細胞質に流れ込んだDNAを検知し、自然免疫を活性化させてインターフェロンを誘導することをこれまでの研究で明らかにしていたが、昨年度は、STINGの新しい機能として実験的自己免疫性脳骨髄炎を減弱させる効果をもつことを明らかにした(J. Immunology, 2014, 192, 5571-5578)。実験的自己免疫性脳骨髄炎は多発性硬化症のモデルとして実験室で使用されている疾病モデルであり、これを減弱させるということはc-di-GMPによる STINGへの活性化が多発性硬化症の治療法として使用できる可能性を示しただけでなく、様々な自己免疫性疾患に対する治療法として有望な成果であると言える。 ②また、マウスモデルにおいてc-di-GMPを用いる免疫活性化により様々な疾病、具体的には百日咳(PLoS One, 2014, 9, e109778)、肺転移癌(Cancer Immunology Research, 2014, 2, 901-910)および腹腔癌(J. Control. Release, 2014, 192, 5571-5578)の治療に成功した。中でもJ. Control. Releaseに発表した腹腔癌の治療においては、世界で初めてDDSとc-di-GMP免疫活性化を複合化した癌治療法で投与量を大きく減少させつつ、強力ながん細胞増殖抑制効果を発揮させることに成功した。 ③このほかにも、近年細胞質DNAセンシングの核心物質である2',3'-cGAMPの合成法、さらにc-di-GMPの誘導体の合成法を独自に開発した。これによって、今後の環状ジヌクレオチドの医学的、薬学的、生物学的研究の発展がさらに進むものと期待されている。
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