研究実績の概要 |
平成27年度に得た主な研究成果を以下に示す。
① 細菌感染に対する免疫応答において、造血幹細胞/前駆細胞(HSPCs)の活性化は重要な鍵となる。これまでにHSPCsの活性化に病原体由来分子が関わっていることは知られていたが、詳細な機構は不明であった。我々は共同研究の成果として、細菌のセカンドメッセンジャーであるc-di-GMPがSTINGを介してHSPCやそのニッチの調節に関わることを示した(Cell Rep., 2015, 11, 71-84)。c-di-GMPはHSPCsの細胞周期開始や移動を促進する一方、長期造血幹細胞(LT-HSCs)の数や再増殖性を減少させる。これらの知見から、c-di-GMPが細菌感染時において必須のHSPCs調節因子であることが示された。
② c-di-GMPは免疫療法における新しいアジュバントとしての効果が期待されているが、細胞膜を透過しにくいため、効率よく細胞質に到達させる技術が必要となる。我々は共同研究として開発したYSK05 lipidを含むリポソームにc-di-GMPを封入することで(c-di-GMP/YSK05-Lip)、NK細胞を効率よく活性化し、悪性メラノーマに対する抗腫瘍活性を得られることを示した(J. Control. Release, 2015, 216, 149-157)。c-di-GMP/YSK05-Lipのマウスへの投与により、I型インターフェロンの産生とNK細胞の活性化が誘導され、悪性メラノーマにおいても抗腫瘍活性が得られた。これは、c-di-GMP がNK細胞の活性化を介してMHC-I非依存的に悪性メラノーマに対する抗腫瘍活性を発揮することを示した初めての報告である。このことから、c-di-GMP/YSK05-Lipはがん免疫療法においてMHC-I依存的・非依存的に抗腫瘍活性を示すアジュバントとして期待される。
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