研究課題/領域番号 |
24350088
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
葛谷 明紀 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (00456154)
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研究分担者 |
大矢 裕一 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (10213886)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核酸 / DNAオリガミ / 単分子機能デバイス |
研究概要 |
本年度はほぼ当初の計画通りに研究が進行した。特にDNAオリガミデバイスに適した力学的特性を中心に検討を行った。 研究代表者がこれまでに作成したDNAオリガミデバイスは、いずれもDNA二重らせんを6本平面状に束ねた構造をレバー部として用いていた。当初は設計の容易さからこのような構造を採用したが、実際にAFM観察を行うとレバーが折れ曲がっているデバイスが多数観察され、1層のシート状構造では水溶液中でかなりの柔軟性を持っていることが示唆されていた。そこで本年度は、より剛直なレバーを持ったDNAオリガミデバイスを作成するため、立体DNAオリガミを作成する手法の応用を検討した。具体的には、レバー部を構成する6本のDNA二重らせんを180°ではなく120°の角度で結合して六角柱型のチューブ状構造からなるDNAオリガミデバイス(DNA Origami Chopsticks)を作成し、その機能を調べた。AFM観察によって目的通りの剛直な構造体の形成が確かめられたものの、タンパクをターゲットとして開いた構造体から閉じた構造体への構造変化を誘起して行う単分子認識においては、この剛直性が不利に働き、従来のDNAオリガミデバイスよりも認識能が劣っていることが明らかとなった。一方、あらかじめ閉じた構造体を作成しておき、ターゲットとの相互作用により開いた構造体へと構造変化を誘導する場合には、非常に良好な収率で構造変化を起こすことができた。このような構造変化は、アガロースゲル電気泳動で非常に明瞭に観察することができ、剛直な構造体はAFM観察以外の観測手法にとっても有益であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
六角形のチューブ構造からなる剛直なレバー部を有するナノメカニカルDNAオリガミデバイス構築を始めとして、DNAオリガミデバイスの力学特性とその機能の相関が明らかとなってくるなど、申請時の研究計画から大きく外れることなく、順調に研究成果が得られている。 外部発表も適宜行っており、今後も計画通りの成果の達成が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
申請時の研究計画から大きく外れることなく順調に研究成果が得られており、特に大きな研究計画の変更は行わず、今後も計画通りDNAオリガミデバイスの実用化を中心に研究を推進していく。 具体的には、本年度構築した、六角形のチューブ構造からなる剛直なレバー部を有するナノメカニカルDNAオリガミデバイスに関して、構造のアロステリック制御による効率的なターゲット検出の可否を検討する。同時に全反射蛍光顕微鏡への固定化による単分子検出計の構築も目指す。従来型の柔軟なDNAオリガミデバイスについては、pH応答型の構造制御の可能性を探る。さらにDNAオリガミデバイスをターゲットとして酵素活性をモニタする系の確立も目指す。 また原著論文による成果発表も重点的に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
調達を予定していた蛍光分光光度計用の水冷ペルチェホルダユニット(65万円)の設置・使用に必須な冷却水循環装置の調達費用が年度内に工面できず、水冷ペルチェホルダユニット自体の調達が年度内に行えなかったため。 年度がかわり次第、冷却水循環装置とともに、調達が繰り越しとなっていた蛍光分光光度計用の水冷ペルチェホルダユニット(65万円)を早急に調達する。次年度使用額のほぼ全てが本機材の調達費用であるため、翌年度分として請求した研究費の使用計画は特に変更せず、研究計画書に記載した内容の研究項目に支出する。
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