研究課題/領域番号 |
24350099
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
宇野 真由美(音羽真由美) 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 主幹研究員 (90393298)
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研究分担者 |
山田 義春 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (50463625)
金岡 祐介 地方独立行政法人大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (60443537)
竹谷 純一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20371289)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 有機半導体 / 有機論理回路 / 高速化 |
研究実績の概要 |
有機トランジスタを用いた高速有機回路を構築する上で重要となる、短チャネル有機半導体トランジスタの高速応答特性、動的なキャリア伝導機構を明らかにすることを目的とし、その過渡応答特性を評価した。本年度は塗布法により作製した高移動度の単結晶半導体を用いて有機トランジスタを構築し、応答性能を評価した。独自に開発した有機半導体上での微細加工プロセスを採用することにより、有機半導体材料への化学的なダメージを極小化してトップコンタクト・ボトムゲート構造を作製することができた。本構造は、電極との接触面積を大きくとることができるため低い接触抵抗を簡単に得ることができるが、従来は有機半導体へのプロセスダメージの影響が大きいため、良好な移動度を得ることが困難であった。本手法を用いて作製したp型、及びn型動作の両トランジスタについて、有機半導体と金属電極との接触抵抗をTransfer line methodにより測定した結果、p型については62 Ω・cm、n型については600 Ω・cm以下という、これまでにない非常に低い値を得ることができた。トランジスタの高速応答のためには、短チャネル、高移動度を実現することが重要であるが、本デバイスではこれが実現している。昨年度と同様にダイオード接続した整流素子の周波数応答性能を測定した結果、p型動作では 50 MHz以上と、有機半導体デバイスとして非常に高い周波数応答性能を得ることができた。高い周波数応答が得られる理由について考察し、これらの結果を論文に発表した。また、p型、n型を組み合わせたCMOS回路について、リングオシレータを構築してその応答性能を測定し、インバータ1段で250 kHzの高速応答性能が得られた。大気中での高速n型動作はこれまでに例がなく、有機トランジスタを用いた有機論理素子構築のために、非常に重要な成果が得られたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有機半導体チャネルの高速化のために重要となるチャネル形成メカニズムについて、整流素子を用いた評価方法を用いることによって、有機チャネルがかなり高速に形成されていることを明らかにした。また塗布法を用いた短チャネル・高移動度有機トランジスタの作製プロセスを工夫し、これまでにない非常に低い接触抵抗の値を実現することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、さらに高速応答が可能な有機半導体チャネルの作製を目標とし、ごく最近提案された新規半導体材料の適用や、さらなる接触抵抗の低減について検討を行う。また、n型動作についても低温測定の可能な領域まで動的特性の測定を行い、DC的な測定で見積もった移動度と応答特性とを比較した詳細な測定を行う。
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