本研究では、革新的な有機電界発光素子(OLED)として単一発光層からなる新規素子構造を提案し、その高効率化に向けた材料開発を行う。平成24、25年度の進捗を受け、本年度は有機金属系ハイブリッドりん光材料の機能最適化を継続して行うとともに、開発した材料を単一発光層に用いたOLED、さらには白色OLEDの創製へと展開した。以下にその概要を示す。 (1)有機金属系ハイブリッドりん光材料の機能最適化 カルバゾール含有デンドロンを付与した青色りん光性トリスシクロメタル化イリジウム(III)錯体を新規合成した。当該錯体では、前年度に開発したビスシクロメタル化錯体に比べて会合が抑制され、薄膜状態でより青色に近い発光が得られた。デンドロン中のカルバゾール部位の数を増やすとさらに会合が抑制され、コア部分に相当する錯体と同様の青色りん光を与えた。当該りん光材料を単一発光層に用いたOLEDではコア由来の青色電界発光が得られた。 (2)有機金属系ハイブリッドりん光材料を発光層に用いた白色OLEDの作製 有機イリジウム系ハイブリッド青色りん光性材料に赤色りん光材料をドープした薄膜を発光層とするOLEDを作製し、白色電界発光の創出が可能であることを明らかにした。また、りん光材料を共ドープする際のりん光材料間の励起エネルギー移動についても、モデル薄膜を作製しその作用機構を明らかにした。さらに、カルバゾール含有デンドロンを付与した青色りん光性シクロメタル化白金(II)錯体を開発し、当該りん光材料のエキシマー発光を利用したOLEDの創出についても検討した。当該りん光材料を単一発光層に用いたOLEDでは、デンドロンの付与が分子間相互作用を促進するため、エキシマー由来の橙色電界発光のみが観測され、モノマー発光とエキシマー発光の混合による白色電界発光の創出には至らなかった。
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