研究課題/領域番号 |
24350103
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
吉田 司 山形大学, 理工学研究科, 教授 (90273127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 酸化亜鉛 / チオシアン酸銅 / ナノ構造 / ハイブリッド / 自己組織化 / 太陽電池 / Turingパターン / 色素増感 |
研究概要 |
本研究では、無機化合物半導体薄膜の電解析出において、電解浴中に添加することで無機/有機ナノハイブリッド薄膜を形成し、その自己組織化構造体を用いた太陽電池の性能向上を果たし、太陽電池のワンポット合成に対する活路を見出すことを目的とする。同時に、ナノスケールでの相分離による自発的なナノ構造の発現について、その形成原理と制御手法の解明を目指す。 前年度の検討で見出された、ナノ多孔質構造を持った高結晶性のp-CuSCN薄膜をローダミンBとの自己組織化と後処理による脱離によって得る手法は、その膜を色素増感光カソードとして用いる検討に展開し、期待通り多孔質化によって光電流を増大することを明らかにした。それら成果を論文投稿し、J. Phys. Chem. C誌に掲載決定されるなどの成果を得た。一方、これまでに多様な有機色素分子のZnO及びCuSCN電析系への添加を試みたが、チューリングの反応拡散モデルによって自己組織化されるナノパターンの形成は既知のZnO/ローダミンB系以外を見出すに至っていない。 ZnO/ローダミンBハイブリッド膜については、ローダミンB濃度の変化によるナノ構造の変化の詳細を明らかにしつつある。また、JFEテクノリサーチ株式会社の協力により、FIB-SEMによる連続的な断面SEM像の獲得と、三次元画像の構築を高度化し、水平方向(膜面方向)でのチューリングパターンの経時変化を示す動画の獲得に成功した。さらに、ポリゴン画像への加工にも成功し、自己組織化ナノ構造の詳細な構造解明に極めてインパクトの大きい画像が得られた。今後電析初期条件を変化させた場合のナノ構造の相違についても同様な手法による画像獲得を試み、ナノサイズチューリングパターンの完全解明を果たすとともに、成果のハイインパクト誌への投稿準備を進める計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZnO/ローダミンB系以外にナノスケールチューリングパターンの自己組織化を見いだせないことは残念であるが、ZnO/ローダミンBハイブリッド膜については、極めてインパクトのある動画による詳細画像、成長過程の可視化に成功するなどの進歩があった。また、前年度に見出したCuSCN/ローダミンBハイブリッド膜の作製とこれを用いた太陽電池について、論文発表をするなど、成果の発信も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ZnO/ローダミンBハイブリッド膜のチューリングパターンについては、ローダミンB濃度を制御することで、漸進的にその形態が変化することを表面SEM写真から確認している。H25年度には、ZnO体積とローダミンB凝集体体積がほぼ1対1になる、代表的なゼブラ模様のハイブリッド膜について、FIB-SEMによる三次元画像獲得に成功した。今後は、異なるチューリングパターンの膜についても同手法による画像獲得を試み、チューリングパターン発生、その成長過程の完全な可視化を実現する。その動画を含め、世界初となるナノスケールでのチューリングパターン発生の事実を、材料系のハイインパクト誌に投稿する。 一方、H26年度は、自己組織化材料の太陽電池への展開を最重要課題として取り組む計画である。ローダミンBに加え、ローダミン6Gも同様なチューリングパターンを与えることが分かっているので、これら自己組織化材料を用いた太陽電池を試作評価する。特に、ホール取り出しに用いる材料にSpiro-MeOTADやMoO3を用いて、EQEの向上を試みる。さらに、太陽電池効率が低い原因は主としてローダミンB凝集体中の電荷移動度の低さに起因すると考えられることから、ワンポット合成のコンセプトからは外れることになるが、一旦ローダミンを除去し、P3HT等の優れた有機半導体を積層したセルも評価して、自己組織化ナノ構造の太陽電池への有用性を検証する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末時点で必要な消耗品が若干予定よりも少なく済んだため。 次年度予算と合わせて、必要な物品の購入等に充てる。
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