研究概要 |
バルクのマンガン酸化物はd-d遷移により可視光を吸収するが,励起電子は直ちに正孔と再結合する。 しかし,Mn酸化物をナノ化すれば量子サイズ効果により,再結合を抑制し,励起電子を光電流として回路に取り出すことができる。一方,Mn酸化物は水溶液中での可逆な酸化還元により動作するレドックスキャパシタ材料である。本研究の目的は,Mn酸化物ナノシートを基板となる電極上に積層させ,可視領域光電変換による直接充電が可能なレドックスキャパシタ材料を開発することである。 具体的には,(1)Mn酸化物ナノシート積層構造を電気化学的に作製し,構造制御により最大光電変換効率を達成する,(2)Mn酸化物ナノシート積層構造を組み込んだキャパシタセルを製作し,高出力・大容量化を目ざす,(3)可視光照射によるセルの発電,および暗中での効率的な放電特性を引き出す。 平成24年度は,まず,過マンガン酸からカソード形成した層状Mn酸化物フィルムの基礎的な半導体特性を調べた。Taucプロットより,バンドギャップは2.4eV(間接遷移),Mott-Schottkyプロットより,フラットバンド電位は+0.47Vであった。実際に可視光を断続的に照射しながら,電流応答を観測した。次に,カーボンナノチューブ(CNT)との複合化によって速い電子移動の実現を目ざした。その結果,Mn酸化物由来の光電流密度は約3倍になった。また,CNTとの複合化は暗中での疑似キャパシタンスの増大をもたらした。
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