研究実績の概要 |
マンガン酸化物 (MnO2) は部分的に満たされたd軌道をもつため, d-d* 遷移により可視光を吸収するが, 光電流を観測した例は3件に限られる。この3件の共通点はMnO2のナノシート構造を使用している点であり, d-d* 遷移で生じた励起電子と正孔の再結合を効果的に抑制した結果と推察される。本研究の目的は,Mn酸化物ナノシートを基板となる電極上に積層させ,可視領域光電変換による直接充電が可能なレドックスキャパシタ材料を開発することである。 平成24~25年度に明らかにした①MnO2/カーボンナノチューブ(CNT)被覆電極の光電気化学特性,②MnO2/CNT被覆電極のレドックスキャパシタ特性を基に,平成26年度は,MnO2/CNTを被覆したFTO電極を正極に,活性炭(AC)電極を対極にしたハイブリッドセルを製作し,光照射により生じた電子をACの電気二重層に蓄える実験を行った。光照射によって発生した電荷とその電荷から見積もったAC対極における電位変化は実測値と良く一致した。次に,KBr存在下,光照射によって生じた電荷を暗中で放電させることを試みた。すなわち,MnO2/FTO電極をKBr存在下で光照射すると,Br-の光酸化による光電流が生じる。次に暗中でカソード掃引すると,光生成したBr2の還元による電流が検出された。すなわち,光充電された電極から暗中で放電が起こったと理解される。さらに,MnO2/CNTよりも大きな光電変換効率を示す材料としてMnO2ナノシートとグラフェンの交互積層薄膜の作製を試みた。ここでは,まずポリカチオンをグラフェンシートにグラフトすることで正に帯電させ,負電荷をもつMnO2シートと電気化学的に複合化させた。
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