研究課題/領域番号 |
24350113
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
熊木 治郎 山形大学, 理工学研究科, 教授 (00500290)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 高分子構造・物性 / 超薄膜 / 表面・界面物性 / 走査プローブ顕微鏡 |
研究概要 |
(1)Poly(methyl methacrylate)(PMMA)/poly(ethylene oxide)(PEO)ブレンド単分子膜の相溶性を表面圧-面積(π-A)曲線、AFMを用いて検討した。両者は、以前のπ-A曲線の検討では相溶系だと考えらえていたが、検討の結果、非相溶系であることが明らかになった。PMMAドメインは、一般的な海島構造ではなく、小さな島状ドメインが連結した特異な数珠状の相分離構造をとる。この構造は、圧縮速度を極端に遅くすると通常の海島ドメインに転移することから非平衡な相分離構造であり、PMMAが凝集膜、PEOが膨張膜であるために膜の粘度が大きく異なるために生じる特異な構造であると推定している。 (2)PMMA/poly(n-butyl acylate)(PBA)、PMMA/poly(n-nonyl acrylate)系ブレンド単分子膜はいずれも分子相溶系であり、PMMA少量添加でそれぞれの単分子膜に可溶化したPMMA孤立鎖を観察可能であるが、分子量100万以上の高分子量領域において、PMMA/PNAは分子相溶を示すものの、PMMA/PBAではPMMA鎖が凝集した非相溶状態を示すことがわかっている。この原因を知るために、希薄状態からの圧縮過程をAFMを用いて検討したところ、PMMA/PNA系がいずれも凝集膜であり、水面に展開した希薄状態で既に分子相溶した凝集体を形成しているのに対して、PMMA/PBA系はPBAが膨張膜であり、希薄状態で凝集したPMMAドメインの周りをPBA分子が覆っている構造を取っている。このために、PMMA/PBA系では相分離が観察されたものと考えらえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種相溶系高分子ブレンド単分子膜を用いて、分子回転半径の評価を進めてきた。また、その過程でブレンド単分子膜の形成過程や相溶性に関する新たな知見も得られ、高分子の2次元状態である高分子単分子膜に関する知見が深まっている。
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今後の研究の推進方策 |
ガラス転移温度(Tg)の異なる相溶ブレンド単分子膜を観察するとTgの差により、単分子膜に可溶化された分子鎖を観察することができ、各種ブレンド系で分子鎖の広がりを系統的に検討してきた。オリゴマーは高分子量体とはTgが異なるため、可溶化した高分子量体を観察可能と考えらえる。オリゴマーをマトリックスとした場合、分子鎖の広がりは2次元の良溶媒中の広がりに相当すると考えらえる。H26年度は、高分子量体/オリゴマーブレンド系で分子鎖の広がりを評価し、2次元の良溶媒中での広がりと比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究においては、日常的に使用するカンチレバーの費用が占めるウェイトが大きい。H25年度は、LB実験の比重が高く、カンチレバーの消費が抑えられたため、次年度への繰り越しが生じた。 H26年度頭に、新たにAFM用空気ばね式除振台を導入する予定であり、その費用に充てるとともに、本年度検討予定のオリゴマー等の購入費用に充当する。
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