研究課題/領域番号 |
24350115
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
土橋 敏明 群馬大学, 理工学研究科, 教授 (30155626)
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研究分担者 |
山本 隆夫 群馬大学, 理工学研究科, 教授 (80200814)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 接触 / ゲル / 異方性 / 高分子 / 界面 |
研究概要 |
濃厚高分子溶液と非溶媒を接触させると界面を通した溶媒の移動と接触界面の形に依存した対称性を持つ高分子の凝集構造が生じる。本研究課題では、高分子溶液と非溶媒との接触による自己組織化を、仮想の透析膜を介した物質の選択的透過を起点とした異方性構造の発現と捉え、その構造形成のメカニズムを明らかにするとともに、現象の普遍性と物質特異性を明らかにする事を目的とする。このプロセスは (i)透析外液と内液の分子拡散(不可逆)、(ii)透析内液から外液への分子拡散(不可逆)、(iii) (ii)による透析内液の変化による高分子の状態変化(可逆)、(iv)接触界面からの配向(可逆 or 不可逆)、(v)架橋(可逆 or 不可逆)の五つに分類され、本研究では、それぞれについて調べるとともに、それらのカップリングについても調べる。 平成25年度は、理論的考察により、系の自由エネルギーを導き、熱力学的記述を完成させた。また、モデル系について、高分子鎖の運動性を支配する因子(ポリマーの種類と分子量、溶剤種、温度など)、接触によるクエンチの条件、得られる構造の関係を詳しく調べた。さらに、境界条件と初期条件、及びそれらと熱力学的条件とのカップリングが分子凝集体成長方向に及ぼす役割を明らかにした。一方、本研究で得られた理論はゲルの分子吸着にも応用できることが分かり、実験との比較検討を行った結果、吸着を特徴づけるパラメータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高分子鎖の運動性を支配する因子(ポリマーの種類と分子量、溶剤種、温度など)、接触によるクエンチの条件、境界条件、初期条件、及びそれらのカップリングが及ぼす影響を明らかにすることができた。一方、シミュレーションに関する解析は、現在も進行中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度までの研究で得られる基本原理に基づいて、不溶化反応法によるマイクロカプセル化および湿式紡糸の工程の解析を行う。不溶化反応法によるマイクロカプセル化は高分子溶液の液滴を非溶媒に浸漬する工程により行う。得られるマイクロカプセルは壁膜に包まれた芯物質の保護と芯物質中の薬剤などの徐放性放出などのために用いられるが、壁膜の異方性は膜の気密性を変化させ、その結果放出速度などマイクロカプセルの機能そのものに影響を及ぼす。一方、マイクロカプセルからの物質放出速度についての申請者らの実験と理論解析によれば、膜厚、カプセルサイズなどを決定する成分濃度や調製時における攪拌速度など以外の調製条件の存在が示唆されている。湿式紡糸は、一般に、本研究で取り扱った高分子溶液と非溶媒との接触が繊維軸の表面で起こり繊維軸に垂直な化学ポテンシャル勾配による溶媒交換と繊維軸方向の延伸とがカップリングする工程であると考えることができる。高分子の配向はほとんどの場合延伸となるが、溶媒交換速度と延伸速度の相対的関係によっては繊維軸に垂直な成分を持つ配向も考えられる。いずれの現象も多くの研究があるものの理論解析に耐えうるような実験条件をきちんと制御したデータはほとんどない。そこで、パラメータを制御して精度の高い実験を行うとともに、壁膜の異方性に影響を及ぼす化学ポテンシャル勾配の効果を取り入れたデータ解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
シミュレーションに関する解析が現在も進行中であるため、解析結果に依存して条件設定が必要となる実験が行えず助成金を繰り越すこととなった。 平成26年度は、シミュレーションによる解析に見合う実験を行うとともに、これまでの基礎研究の応用となる当初の計画も並行して行う。
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