二軸伸長は,高分子の成形方法として工業的に広く利用されている.この理由は,伸長によって物性が向上するためであり,幅広い高分子材料で利用されている.学術的には,二軸伸長実験は,ひずみテンソルの普遍量を幅広く変えることができ,非線形性の解析にきわめて有用な方法である.しかしながら,高分子材料の二軸伸長特性の研究は,ゴム等の弾性網目が中心で,粘弾体や粘塑性体に関する研究が乏しい.本研究では,メゾ相等,微視的不均質構造を有する高分子の二軸伸長特性について,レオオプティクスを駆使して現象論的に解明する.続いて,この解析で得られた現象論的パラメーターと分子構造・微視的構造との関係を明らかにし,高分子精密加工方法,高性能高分子材料の開発への指針を与えることを目指した. ポリエーテルブロックアミド共重合体(以下PEBAX)を190 ℃に熱した油圧式プレス機により加圧し、十分に緩和させた後、氷水により急冷を行った。以上の操作により得られたフィルムを70×70 mmにカットし、室温(17 ℃)二軸引張試験機を用いて伸長を加え、ひずみ—応力測定ならびに複屈折測定を行った。測定から得られた伸長比と応力値からWの関数形をモデル的に決定し、妥当性を確かめた。塑性的挙動を表すため、ひずみテンソルの普遍量に依存する散逸項を導入した。この結果、導入したWは、ひずみ—応力曲線をうまく記述した。これは、PEBAXフィルムのひずみ結晶化が変形様式による影響を受けにくく、結果的に応力が今回提案したモデルで記述できたためと考えられた。以上の結果について、第62回レオロジー討論会で発表を行った。
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