研究課題
本研究は、熱的に非平衡な状態(安定な温度勾配)にて顕在化する高分子の輸送現象(分子拡散と構造形成現象)を調べることを主要な目的としている。すなわち(1)高分子溶液に外場として安定な温度勾配を与え、熱平衡状態から離れた条件にて起こる濃度勾配形成現象(ルードヴィッヒ・ソレー効果)のデータ取得を行い、(2)このような構造形成現象を支配する主な因子である物質流やエネルギー流、そして分子レベルでの相互作用が果たす役割の詳細を解析する。さらに(3)これまで申請者によって見出された異常なルードヴィッヒ・ソレー効果(負のソレー係数)の分子論的メカニズムの解明を目指す。これにより、非平衡熱力学分野に実験データを提供するとともに高分子物理学や非平衡熱力学に新たな知見を提供し、これら学問分野の発展に寄与することを目的としている。これまで研究は順調に推移しており、研究成果は学術論文、招待講演、国内外での学会発表等を下記の通り行っている。本課題の一連の研究から派生した共同研究の成果を発表した国際会議では、Best Poster Awardを受賞している。また、科研費新学術領域「ゆらぎと構造の協奏」公募研究に申請し採択に至った。新学術領域「ゆらぎと構造の協奏」の研究目的は、非平衡物理学の深化を目指すものであり、そういった意味では本課題の目的と共通している。したがて、研究業績は区別するのが難しく本課題および新学術の両者に記載している。3年目終了までに、測定対象としている高分子と糖類を溶質とし、溶媒としての水およびアルコールからなる測定系は順調にデータ取得が進んでいる。これら得られた実験データをベースに現象を理解するためのモデル構築をしつつ、ここで必要となった新たな実験条件にてデータ取得を続けている。
2: おおむね順調に進展している
3年目に計画していた研究内容とそれに関するデータ取得はおおむね順調に進んでいると判断される。それは、水系サンプルおよび非平衡系のデータ取得を実施するという実験研究という難しさを鑑みても、データ取得がほぼ予定通り進んでいると判断したためである。
最終年度(4年目)は、これまでの研究成果をまとめ論文発表をすることに重きを置き、そのための再現性の確認や不足しているデータ取得などを中心に進める。また、現象の理解を深めるために理論研究者を分担者として新たに迎える。すなわち今後の発展性をにらんだ研究内容を実施しつつ、本研究課題の目的達成のために研究を遂行する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (40件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Journal of Molecular Liquids
巻: 206 ページ: 39-46
doi:10.1016/j.molliq.2015.01.057
東海大学理学部紀要
巻: 50 ページ: 111-119
European Physical Journal E
巻: 37 ページ: 94-100
doi.org/10.1140/epje/i2014-14094-1
Journal of Advanced Science
巻: 24 ページ: 41-44
http://www.sp.u-tokai.ac.jp/~rgms/indj01.html
http://www.mnc.u-tokai.ac.jp/
http://www.u-tokai.ac.jp/research/recent_research/tokai_project/