研究課題/領域番号 |
24350123
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
田代 孝二 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60171691)
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研究分担者 |
吉岡 太陽 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (90596165)
山元 博子 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (10423592)
田原 大輔 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (80469197)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超高弾性率 / 超高強度 / ナイロン / 相転移 / 水素結合 |
研究概要 |
重要な汎用性高分子の力学物性を極限までもたらすことで金属をも凌駕する高分子材料が創成できれば、その材料は社会的にも大きな影響を与え、産業力を高める上でも極めて重要な存在となる。脂肪族ナイロンはポリエチレンに匹敵する力学物性を与えるはずで(我々の計算では分子鎖軸方向に約300GPa(-150oC)~100GPa (20oC))、その高い融点を合わせると超高弾性率・高強度繊維としては最も望ましい高分子とも考えられる。しかし水素結合が分子鎖の動きを抑制しているために、超延伸が困難で、これまで超高弾性率・超高強度試料作成には成功していない。申請者らは脂肪族ナイロンの結晶相転移を詳細に調べ、従来の低温相から高温相へのブリル転移に加えて融点直下に新しい相転移を見出した。分子鎖間水素結合がほとんど切断され、分子鎖は鎖軸方向に激しく運動する。この状態で延伸が容易になるはずで、超延伸が可能になると期待出来る。まず対象として選んだ脂肪族ナイロンは、申請者らが初めて融点直下の相転移を見出したNylon1010である。ブリル転移が150℃から180℃範囲で、融点の200℃までの狭い温度範囲で高温相転移を示す。今年度、我々は、溶融紡糸したNylon1010試料を様々の温度で延伸し、得られた繊維についてヤング率、破断強度、破断歪みを測定した。その結果、ブリル転移が高温相転移に移行する180℃付近で最も延伸しやすく、また切断しにくいこと、得られた配向試料の力学物性が最も高いことを見出した。それと平行して、広角小角X線散乱を測定したところ、丁度、この温度範囲で長周期が大きく増加すること、また結晶構造そのものも変化してくることが分かった。さらに、興味深いことに、応力歪曲線の途中に通常のポリマーでは見られない応力一定のプラトー部分が存在することが判明した。その理由を現在、X線回折測定などによって行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
断面積の均一な試料を作成し、高温で最高まで延伸することが極めて困難であり、ようやく、そのコツが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
高温相転移の温度範囲は極めて狭く、オイルバスによる温度制御のレベルで、再現性の高い試料作成を行うことが困難である。今年度は最高の力学物性を与える温度範囲を見極めるとともに、その状態の内部構造の解明を行う。また、力学物性と構造との関わりを計算機シミュレーションに基づいて明らかにする。 予算は主に、ナイロンの力学物性と構造との関わりを解明する計算機シミュレーション推敲と試料作成実験に注力してくれる研究者を雇用する費用、消耗品などに使用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ほとんど計画通りに進んでいる。 消耗品など、実験遂行に必要な費用として使用する。
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