研究課題
重要な汎用性高分子の力学物性を極限までもたらし金属を凌駕する高分子材料が創成できれば、社会的にも大きな影響を与え産業力を高める上でも極めて重要となる。ポリエチレンについては超延伸試料が開発された。ポリエチレンと類似したジグザグ形態をとる脂肪族ナイロンも、極限状態としてポリエチレンに匹敵する力学物性を与える(我々の計算では分子鎖軸方向に約300GPa(-150℃)~100GPa (20℃))。分子鎖間は水素結合で結ばれ、300℃に及ぶ高い融点を有している。ナイロンは、超高弾性率・高強度そして高耐熱性を併せ持つ望ましい繊維になり得る。しかし、この水素結合が分子鎖の動きを抑制し、ポリエチレンのようには超延伸が出来ず、この40年間、超高弾性率・超高強度試料作成は成功できていない。申請者らは、従来のブリル転移に加えて、融点直下に別の相転移の存在を見出した。分子鎖間水素結合が切断され、分子鎖は鎖軸方向に激しく運動する。この状態で延伸が容易になるはずで、超延伸も可能と期待した。しかし実際には、もう一つの因子が妨げとなった。融点直下における分子鎖切断の容易さである。ナイロン66、ナイロン1010などについて、種々の温度における超延伸を試みた。融点直下で延伸倍率は、低温域の延伸倍率の約2倍に上がり、ヤング率は3倍程度に増大したが、強度が上がらなかった。その原因をラメラ積層構造の変化などから考察した。延伸の実験は高温での一軸延伸操作であり、操作そのものは極めて単純であったが、ゾーン延伸など従来の方法と同程度にまで物性を高めることが出来た。融点直下での延伸を困難にせしめた重要な理由として、ポリエチレンの場合のような百万に及ぶ超高分子量試料を用いることが出来ず、それが融点直下での切断の容易さにつながっていたものと考えている。今後は、如何に超高分子量ナイロンを合成するかに注力せねばならない。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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