本研究では、ダルトンの化学量論の本質を見直し、MgOドープにより化学量論組成と調和融解点が一致する新しいタンタル酸リチウム、cs-MgO:LTを開発した。その組成は、Ta2O5=50%ライン上の9.2mol%MgOを添加した組成点(Ta2O5 : Li2O : MgO = 50.0 : 40.8 : 9.2)である。直径23mm、直胴長50mmの単結晶を引き上げ法により育成し(固化率70%)、キュリー点及び、屈折率変動にて育成結晶の均質性を評価した。前者は、焼結体原料―結晶―残液を通して、700.3~700.7℃の変化に収まり、後者は、結晶の上、中、下部で常光、異常光とも、屈折率は、2.2程度で、その変動は、装置の分解能の0.0001以下であった。この結果は、cs-MgO:LTが非常に優れた均質性を持ち、調和融解成長する結晶であることを示す。イオン種を含めたすべての融液構成種の偏析係数は1であるので真の調和融解結晶となり電荷を持つ点欠陥は存在しない。このためレーザー光の結晶内分散は極度に小さいことが期待できる。熱伝導率は、既存の調和融解結晶(Ta2O5 : Li2O = 51.5 : 48.5)とほぼ同じであった。一方、cs-MgO:LTの化学量論性は、結晶化起電力がゼロになることにより証明した。本結晶は、不純物や、空格子欠陥を含む新しい化学量論組成の概念の展開の上に創成した真に新しい調和融解タンタル酸リチウム結晶であり、高出力の緑色光源素子として、超小型プロジェクタなどに利用できるであろう。
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