研究課題/領域番号 |
24360004
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
矢口 裕之 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (50239737)
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研究分担者 |
尾鍋 研太郎 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (50204227)
窪谷 茂幸 東京大学, 新領域創成科学研究科, 助教 (70583615)
片山 竜二 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (40343115)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 半導体物性 / エピタキシャル成長 / 光物性 / 単一光子 / 励起子分子 / 量子もつれ光子対 / 原子層ドーピング / 等電子トラップ |
研究概要 |
エピタキシャル成長、原子層ドーピングおよび微細加工技術を利用して、窒素原子あるいはエルビウム原子局所ドーピング構造半導体を作製し、量子情報通信において重要な役割を担う、高純度、完全ランダム偏光、かつ優れた波長再現性を有する単一光子および量子もつれ光子対の高効率生成を目指して研究を進めている。今年度の研究実績は以下の通りである。 1.単一光子の高純度化および励起子分子による量子もつれ光子対の生成を目指して、エピタキシャル成長および原子層ドーピングの条件を検討した。窒素原子局所ドーピング構造半導体に関しては、研究分担者グループがフーリエ変換赤外分光を用いて、試料中の残留キャリア濃度を非破壊的に評価することによってエピタキシャル成長条件にフィードバックさせ、バックグランド発光がほとんど存在しない試料を作製することができた。エルビウム原子ドーピングに関しては、成長条件の検討によってエルビウム濃度3.7%のErGaAs混晶の作製に成功した。 2.バックグランド発光がほとんど存在しない窒素原子局所ドーピング構造半導体を用いることによって空間的に孤立した単一の窒素原子対からの励起子分子発光を明瞭に観測することができた。励起子発光、励起子分子発光ともに量子暗号通信への応用に適したランダム偏光であることを明らかにした。 3.単一光子および量子もつれ光子対の生成効率の向上を図るために、GaAs/AlAs多層膜からなる分布ブラッグ反射構造を作製した。分布ブラッグ反射構造を用いることによって、単一光子発生にとって妨げとなる基板からの発光を抑制できるという効果が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りにエピタキシャル成長および原子層ドーピングの条件をほぼ確立することができたことと、単一の窒素原子対からの励起子分子発光を明瞭に観測することに成功し、励起子発光、励起子分子発光ともに量子暗号通信への応用に適したランダム偏光であることを示すことができたことから、現在までの達成度はおおむね順調であると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き窒素原子局所ドーピング構造半導体の作製を行う。また、初年度に作製した分布ブラッグ反射共振器構造の光子発生効率への影響について調べるとともにマイクロピラー構造の作製に取り組む。エルビウム原子局所ドーピング構造半導体の作製に関しては、初年度、エルビウム原子をドーピングする条件について検討してきたので、その結果を活用して進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入したミニ分光器が当初の見込み金額よりも低くなったために当該助成金が生じた。次年度は、主に試料作製にかかる物品費に充てることによって有効活用する計画である。
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